☆庭球部屋A☆
□我儘な猫
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春休みも終盤に入り、桜も満開を過ぎた頃。
相変わらず突拍子もなく、英二が俺の家を訪れた。
毎日部活で顔を合わせているにも関わらず、会えると際限なく嬉しいと感じるものだ。
「どうした英二?元気ないみたいだけど…」
大体の想像はつくが、聞いてあげた方が機嫌の直りが早いのは良く知ったことだ。
部屋に通してあげながら、さり気なく聞き出してやる。
「聞いてよ大石!チィ兄ったら、オレのゲーム勝手にクリアしてんの!!オレより先にだよ!?」
「この前買ったヤツか?」
「うん…ヒドいよね!!」
慰めるように頭を撫でて、英二の話に頷いてあげる。
そうすればすぐに別の話題へと移っていく。
「だから、そん時の乾ったら可笑しくって☆」
ほらね?
「へぇ、そうなのか」
「大石にも見せてあげたかったなぁ〜、薫ちゃんの右ストレート!」
「乾…御愁傷様…ι」
会話が一段落ついたところで、俺は英二を部屋に残して一階へと下りた。
「秀一郎、お茶が入ったから」
「有難う」
タイミングが良いのはいつものこと。
英二は母さんのお気に入りだから、お茶菓子も豪勢だ。