☆庭球部屋A☆
□それが日常
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高等部の入学式も終わり、自然とテニスコートに足が向く。
跡部が何かしたらしく、全ての設備が充実したものへと変わっていた。
「やっぱ広ぇなぁ…」
中等部もかなりの人数だったが、高等部の部員数はその比じゃない。
コートも2面ほど多いし、部室も倍はありそうだ。
「……」
ただ黙って眺めながら、無意識に長身の銀髪を探している自分に気付く。
どれだけその存在が大きかったか、今なら分かる。
『待っててくださいよ?』
『あ?』
『俺…もっと強くなって、宍戸さんを支えられるようになってから帰って来ますから』
『……』
『アナタの隣は誰にも渡したくない』
長太郎との最後のダブルスが終わった時に言われた言葉。
オレは長太郎がいなかったらどうなっていたんだろう?
レギュラーには戻れなかったに違いない。
「…長太郎…」
いつも見上げれば暖かい微笑みが降ってきた。
そんな日々に慣れてしまったオレは、声が聞こえないだけで不安になる。
アイツは不安になるよりも、強くなることを選んだのに…
「シングルかぁ」
オレの傍にいるために、強くなると言ってくれた。