☆庭球部屋A☆
□寄り道
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雨で濡れたコートは、とてもじゃないけど練習は出来ない。
同じように外に出てきた部員と片付けをして、俺達は早々と帰る準備を始めた。
「濡れたらさ、へたるんだね」
帰る準備なんかする様子もない千石から言われた言葉。
俺への言葉だということは分かるが、よく意味が分からない。
「何がだ?」
「髪だよ、か〜み!」
そう言うと千石は立ち上がって、俺の髪を撫でるように触る。
「南のツンツンヘアーが台無し」
「いつものがいいか?」
確かに立っていない髪を自分でも触って、今の髪型は変なのかと落ち込む。
そんな俺に、千石は笑いながら付け足した。
「いいんじゃない?爽やかでさ☆」
俺より爽やかな笑顔で言われても説得力に欠けるけど、褒められると嬉しいものだな。
「惚れ直しただろ?」
気分が良かったのでそう言うと、らしくなく千石は固まった。
顔が赤くなってるのは気のせいか?
「ま、まぁ…いいんじゃない?」
クルリと俺に背を向け、気が付けば二人きりになっていた部室の椅子に腰掛ける。
いつもフザケてるくせに、照れると目も合わせられないなんて。
可愛すぎると思わないか?