☆庭球部屋B☆
□笑顔の理由
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「…鳳…」
「あ、日吉…ゴメン、邪魔?」
「いや…」
いつの間にか隣に並んでいた日吉が、少しだけ遠い目をして言った。
「ヘマ、すんなよ」
それだけ言って歩いて行く日吉に、感謝と尊敬の気持ちを抱く。
多分日吉は、俺の寂しさに気付いてる。
自分だって寂しいはずなのに、彼は真っ直ぐに前だけを見つめているんだ。
「サンキュ!!」
叫んだ俺に、日吉は小さく手を上げた。
「宍戸さん…」
宍戸さん、俺は大丈夫ですよ。
頼もしい仲間がいて、ちゃんと俺の背中を押してくれる。
落ち込んだ時、宍戸さんの声を探す自分がいることに変わりはないけれど…
それでも、頑張れる。
「宍戸さん、今日は会えますか?」
我儘、言わせてください。
変わりに俺はずっと笑顔でいますから。
アナタを笑顔にしますから。
「よしっ!」
ラケットを強く握り直し、俺は足元に転がるボールを弾ませた。
「一球…」
そのまま高く高く投げ上げると、眩しい太陽に気合いをもらう。
まるでアナタみたいに明るく、強い太陽。
「入魂!!」
打ち込んだボールは、真っ直ぐにセンターラインを目指していた。