☆庭球部屋B☆
□綺麗って、そう思う
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◎日吉side◎
校内に入ってすぐ、玄関を抜ければ三階まで続く吹き抜けへと出る。
高い位置まで付いている窓は、少しだけ涼しくなった空気を温めるように太陽の光を引き入れる。
「日吉!」
急に呼ばれて視線を移すと、三年棟の階段から俺を見下ろす優しい瞳。
「滝さん…おはようございます」
「おはよ〜」
癖なのか、手すりに置いた腕の上に顎を乗せたいつもの姿。
不意に駆け抜ける風によって滝さんの髪はフワリと舞い、俺は目を細めて見つめてしまう。
…いや、見惚れてしまう。
あまりに綺麗で、眩しくて。
「朝練?」
「えぇ…滝さんは一限から移動ですか?」
「そうだよ〜、理科室にね」
あ、嬉しそう。
そんな顔されると、自惚れてしまうじゃないですか。
「何か嬉しいなぁ〜…オレの行動、ちゃんと気にして見てくれてるんだ」
…自惚れて良かったのか。
「当たり前じゃないですか。俺が他人を気にするとしたら、滝さんと下剋上する相手くらいですよ」
「フフ♪」
「そんな当たり前ことが嬉しいんですか?」
「うん。それを当たり前だと思ってくれてることが嬉しいの」