☆庭球歌劇部屋☆
□俺の思い出
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夜も更けて、近辺の家の明かりもない。そんな時間。
「たかしぃ〜…」
携帯と睨み合い続けている男。
「いいよな?…で、でも、寝てたら怒るしなぁ〜ι」
携帯の画面には、一つの番号と、"永山たかし"という文字。
指は通話ボタンの上。
「会いたいな…」
しかし、指は通話ボタンではなく、クリアと書かれたボタンへ。
画面は満円の笑みを浮かべた永山の画像へと変わった。
「ゔ…待受変えとくんだったι」
ボスンと、そのまま後ろのベッドに倒れ込み、もう一度画面を通話の出来る状態へと変える。
「…グダグダ考えてたって一緒だよな!よし!!」
足を振り上げ、上体を起こし、そのままの勢いで通話ボタンを押す。
「怒る…よなι」
自分から電話を掛けて、相手が出る前に落ち込んでいる男。
土屋裕一。
「つ〜か、出てくれんのかな…?」
ゆっくり手を伸ばす先。
一つの手袋。
今日、押し入れの奥へと行くハズだった物。
仕事の都合で、やっと始めた衣更えの途中で出て来た、永山とお揃いで買った手袋を握り締める。
"会いたい"と、漠然と土屋が思ってから、3時間後の出来事だった…