☆庭球歌劇部屋☆
□優しい君へ
2ページ/8ページ
「あ、電気ついてる!もう帰って来てるんだ…」
見上げたマンションの一室。
珍しく俺が来る前についていた電気に、心が暖かくなる。
「今日のメニューはキメちゃん特製カルボナーラ海老風味♪」
言いながらも笑顔が漏れる。
だって、阿部βが俺の帰りを部屋で待っていてくれてる。
『おかえり』って言ってくれる。
それって幸せじゃない?
「そうだ!」
気まぐれの思いつき。
俺の専売特許。
携帯を取り出して、着信履歴を開くと、一番最初に出てくる名前に電話をかける。
「…あ、阿部β?キメだけど、もう少しで着くよ♪」
こう言うと阿部βは、
『今どこらへん?』
って聞いてくる。
「マンション見える公園」
『荷物重いでしょ?迎えに行くから待ってて!』
答えた俺に、阿部βはそう言って電話を切った。
阿部βは優しいから、いつも俺のことを考えて行動してくれる。
でも、俺は既に玄関の前。
はい、嘘つきました☆
ドアを一枚挟んだ向こうから、こっちに近づいて来る足音。
俺はドアにぶつからないように離れると、ドアが開くのをひたすら待った。