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小さなきっかけ
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秋。
文化の秋、運動の秋、勉強の秋。
―今日9月20日は、運動の秋、運動会である。






小さなきっかけ







「土方さんは何に出るんですかィ?」
「…借り物。お前は?」
「俺は二人三脚でさァ」

晴天の空の下、今まさしくパン食い競争が行われている。
神楽が「あたしのパンアルネー!」などと叫びながら走っているトラックの外で、土方と沖田は会話をしていた。

「じゃあ土方さん次じゃねぇですかィ」
「あー…」

ここで平然とタバコを吸っている奴は、風紀委員、副委員長の土方十四郎。

「借り物はやっぱり、マヨですかねィ」

その男に毒づいているのが沖田総悟、俺だ。

「てめっ『借り物に出る人は、入場門に集まってください』…ちっ」

舌打ちをして土方は去っていった。
あーあ、二人三脚なんてかったりィや。だいたい、高杉となんて練習すらしたこともないのに、うまく行くわけない。
そう考えて沖田は、とりあえず自分の出番まで寝ようと思い、場所探しをはじめた。
グラウンドからは軽快な音楽が流れて気分が心なしか軽くなる。
空はむかつくほど青い。
のんきな事ばかりを考えていたら、土方が浮かんだ。今頃たぶん、借り物をしているだろう。
マヨネーズとかありきたりじゃなくて、土方が困るようなものがいい。
困った姿を想像して、ほくそ笑んだときだった。

「おい総悟!」

土方が、いた。


借り物なんて面倒だ。
さっさとおわらせてやろうと、俺はスタートした。
紙のあるところまで走って、その中から適当なのを選んだ。
開いた瞬間、血の気が引いた気がした。

―好きな人

そんな、女みたいな事。
でも頭にはたった1人、浮かぶ顔。
たぶんまだあそこらへんにいるだろう。そう思ったら、走りだしていた。
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