最低な、男

□and You're mine
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「帰ろっか?」



俺が優しくそう言うと、獄寺は何も言わずに頷いた。





――そんな寂しそうな顔しちゃって。






随分かわいいじゃないか。


獄寺は必死に隠してるつもりだろうけど、でも俺にはバレバレなのにな。

込み上げる笑みを隠しながら俺は獄寺に声をかける。




やさしいやさしい獄寺。

純粋で綺麗で大変かわいらしい。



お前が俺のものになるまで、あともう少し。


同時にこんな遊戯を続けるのも、もう少しだ。



――時間を割いて、欲望を消して、慣れない眼鏡までかけて、

何とも思ってない顔をするのも全てはお前を手に入れるため。

気付いた時にはもう逃げられないように、俺は何重にも罠を仕掛ける。






獄寺は、自分のために俺がこんな煩わしいことをしてるんだとでも思ってるんだろうが、
生憎それは違う。




獄寺、覚えておきな。

大人は何らかの下心なしに、必要以上に近付いたりしないんだって。


お前を引き止めているのは俺のエゴ。

単なる俺の独占欲にすぎない。



これが他の生徒と同じ優しさだと思うなら、それは大きな勘違いだ。





「……生徒を手懐けるっつうのも楽じゃねぇな…」



「――?なんか言ったか?」

「や、なんでもねぇよ?」

何も知らない獄寺に、俺はニッコリ笑った。





――この感情は他とは違う。




少なくとも、他のヤツラにはドロドロに甘やかしたくて、でも同時に手酷く苛めたいと思うような、


身の内から沸き上がる強い感情はないのだから。






and You're mine

思うがまま









(付け入れるなら、どこまでも)


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