短いおはなし

□知りたくない、知ってしまった。
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自分は淡白な性格だと、山本武は自覚している。


どんな事にも興味をもつ強い好奇心はあるのだが、大抵の場合その情熱が長続きしないのだ。
好きな色も女の好みも机の上に無造作に置かれた最新のコンポも、全部全部。

今まで生きてきた中で唯一飽きずに続いているものといえば野球くらいだろう。


だからこそ“彼女”はトクベツだった。


ロリ顔なのに胸がデカいと評判の、隣のクラスのユリちゃんも、当時まだ小学生だった俺にいろいろイケナイことを教えてくれた大学生のお姉さんも、
それなりに愛してはいたけれど、これほどまでに執着したことはなかった。


確かに容姿は目を奪われるほど、綺麗だ。
フランス人形のように整った小さな顔。そのくせ大きな瞳はパッチリと輝かんばかりにその存在を主張しているし、その瞳の色はまるで海のように、深い。
でもそれは彼女を彩るもののほんの一部にすぎない。

そう、獄寺隼人だから欲しいのだ。

女の子の裸を見ればそれなりにムラムラしたし、ヤりたいなぁとは思ったけれど、これほど強い衝動は初めてだったから。




「何してんの?」



こんなところで会えるとは思ってなかったから、内心、ものすごく動揺した。
声が裏返らなかっただけよかったと思う。
もしそんなことをしたら彼女の眉間の皺はますます増えていただろうから。

案の定、山本を見た獄寺は心底嫌な顔をした。

「お前には関係ない」

下駄箱に所在なさげにもたれかかっていた獄寺はツンと顔を背けて言った。

これだけ人の心を乱しておいて、関係ないことがあろうか。

「ツナならもういないぜ」

野球で遅くまで残っている山本と違い、帰宅部の綱吉は早々に帰っていた。

親切のつもりで言った山本の言葉に、獄寺は困ったような顔をした。

「別に…今日は、十代目を待ってたんじゃないし…」

そう言ってチラッと顔を見られれば嫌でも期待してしまう。
関係ないと言われたのは、つい先程だというのに。


「なら…」
誰を待っているのか?


その思いは言葉にならなかった。



廊下の向こう。山本の視線の先に、
雲雀が立っていたから――。




知りたくない、
知ってしまった。

(頭の中で、警鐘が鳴り響く…)



 

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