短いおはなし

□キャンディポップ
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「何これ?」

山本の家に行くと部屋中にキャンディが散らばっていた。

「明日はホワイトデーだからさ、そのお返しに」

いっぱい買ってきたんだ、と言って山本は俺の口にキャンディを一粒ほおった。

「ふぅん…」

俺が呟くとキャンディも口の中でカランと音を鳴らす。


けばけばしい色をした、甘ったるいイチゴ味。

きっと山本にプレゼントをあげた女たちは、こんなちっけなものでも喜んで貰うんだろう。

「バカバカしい」

床に散らばる色とりどりのキャンディはキラキラきれいだけど、そこにキモチは何も入っちゃいないのだ。

だから俺がセンチメンタルな気持ちになるのもおかしな話なのだけど。


こんなもので喜ぶ女たちも、

何も考えちゃいない山本も、

些細なことで嫉妬する俺も、


なんだかとってもかわいそうで、
自分がかわいそうだと気付かないアイツ等の代わりに俺が悲しんでやるのだ。

「ごくでら〜あめちゃんおいしい?」

大量のキャンディを小袋に包みながら、山本が笑う。

…てゆーか、

あめちゃんってなんだ、あめちゃんって。



山本のへらっと絞まりなく笑う口元にムカついたのと、

俺の口の中を占領する、その安っぽくて後を引く甘さがくせになりそうで。

やっぱりなんだか悔しいから、あめちゃんは山本の口に返してやった。





キャンディポップ
(なんだか切なくて、
でもすごく、甘い)






 

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