短いおはなし
□熱情2
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その縋る視線が、たまらない。
彼の熱を帯びた視線がこちらに向けられるたびに、
俺は密やかな優越感と沸き上がる激しい衝動に苛まれる。
口付けに濡れた唇も、
快感に甘くとろける瞳も、
頼りなく縋る指先も、
哀れなまでに色付く白肌も、
あの獄寺がこんなにも淫らに変貌することを、一体誰が知っているだろうか?
――いや、知っているはずがない。
獄寺を思うが侭に乱すことができるのは、俺だけ。
俺の名を呼ぶ、少し掠れた甘い声を聞くことができるのも、俺だけ。
俺だけが獄寺の全てを見ることができるし、俺だけが彼の最も敏感で最も感じる場所を弄ってやれる。
そう思うと背筋がゾクゾク震えるほどの喜びを覚えたし、
彼の言動の全部全部、俺を煽って止まなくて。
そのまま細い身体を押し倒して、思うがままに激しく突き動かしてしまいたい衝動を押さえるのに、俺は必死だった。
……でも、まだ早い。
激情のままに俺から求めてしまったら、わざわざキスだけで止める意味がなくなってしまう。
これは、全てを得るための我慢なんだ。
獄寺が、自分から俺を求めてくる、その時まで。
だってそうじゃなきゃ、不公平だろ?
俺はこんなにも獄寺を愛してるのに、
お前は自分だけ何も知らない顔をして、黙って熱を受け取るだけなんて。
ましてや俺がいなくても平気なふりをする。
1人で生きていけると高を括る。
だから、自覚してよ。獄寺。
その身体は、俺なしでは生きていけないこと。
お前が望むもの全てを与えられるのは、俺しかいないのだと
お前は早く知るべきだ。
なぁ獄寺――
早く、早くお前のその甘い唇で俺を求めて。
俺が欲しいと身も蓋もないほど乱れて泣いてよがってよ。
そうすれば、
もう俺から離れられないように、深く深くその身体に刻み込んであげるから。
熱情
(愛しすぎて、狂ってしまいそう)