長いおはなし

□ドリーミングガールとマフィアな僕《5》
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昨日はあの後野球部にも顔を出した。まだ部活見学期間じゃなかったから1年生は先輩に口添えしてもらった俺だけで。顧問や先輩に名前を覚えてもらえたばかりか練習にも参加させてもらえた。
やっぱり高校生は身体つきが全然違う。同代に比べて俺はけっこうデカイ方だけど、先輩たちはなんていうか身体の芯がしっかりしている。そんな人たちと一緒に練習するのはすごく刺激になった。しかも先輩たちからは

「明日もまた来るんだろ?」

なんて声をかけてもらえて。


そんなことがあって俺は鼻歌を歌い出しそうなくらい機嫌がよかった。

「おっはよー!」

教室に入り挨拶をすると、昨日仲良くなった奴らばかりか話したことのない人たちからも声がかえってきた。

「はよ。どうした〜山本テンション高いじゃん」

「へへっ、まーな」

席につくと先にきていた金井が不思議そうに訪ねる。

「何かいいことでもあったわけ?」

いいこと?そりゃあありましたとも。

あのあと小僧の一言でようやく落ち着いた獄寺さんはしばらくブツブツ言っていたけれど、沢田さんに促されて不本意そうながらも自己紹介してくれた。
沢田さんと同じ2年A組の獄寺隼人さん。あの日本人離れした顔立ちはイタリア人のクオーターだからだそうだ。

野球があるからマフィアごっこには参加できないと言おうとしたけれど、小僧に部活じゃないから兼部も可能だと言われて結局うやむやになってしまった。でもそのおかげと言ってはなんだけど、獄寺さんにはまたマフィアごっこのことで連絡するからと、そして沢田さんとは個人的にメアドの交換をしてもらえた。




SHRのあと、ディーノ先生は学校案内といって俺たちを教室の外に連れ出した。並盛高校は県内の私立高校の中でも1、2を争う有名校で、学校も大学みたいに綺麗で大きいと好評だ。
文武両道を掲げているこの学校は、勉強机の置かれた広々とした図書館やパソコンがずらっと並ぶメディア室、科学室に進路指導室だけじゃなく、部活動にも力をそそいでいる。
昨日野球部に参加して思ったことだけど、マシーンといい夜間ライトといい設備が充実してる。部室も部活ごとに与えられているし、先輩の話によると講習を受ければ誰でも使えるトレーニングルームというものもあるそうだ。

こんなに設備が整っているわりに俺たち生徒の学費がそこまで高くないのは、噂によると大富豪の理事長が多額の寄付金を出しているかららしい。
もっとも噂は噂だから、どこまで本当かはわからないけど――





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