長いおはなし

□ドリーミングガールとマフィアな僕《6》
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一通り学校を回ったあと、教室で委員会決めやら何やらをして午前中は終わった。まだ授業が始まっていないからか、時間が過ぎるのは本当にあっという間。そのくせお腹はいつもと変わらずに空くもんだからどうしようもない。
俺は席も近いし金井と一緒に弁当を食べた。女の子はみんなで固まって大きなグループを作っているけれど、男子はその場にいる奴と適当に食べることが多い。もっともお互いに固まって食べるほどまだ仲が良くないからかもしれないけど。

中学までは給食だったから弁当を持ってくるというのはどこか新鮮でワクワクした。親父が作ってくれた弁当はおいしいんだけど、中学の時に使っていた弁当箱だからか今一つ物足りない。これじゃすぐに食べ終わっちゃうなぁと思いながらふと金井を見ると、金井の持っている弁当にビックリしてしまった。

「金井の弁当、すげーのな!」

なんていうか、親の愛情満点!って感じだ。さすがにご飯にハートマーク、とかはないけれど、玉子焼きに小松菜が刻んでいれてあったり、お手製の煮物が入っていたりバランスを考えて作られているのがよくわかる。
こう言っちゃ何だけど、金井は背が高くて髪も染めてて結構チャラい感じだから、イメージと違って余計に驚いた。

「恥ずかしいから見んなよー」

「や、でもソレ、すげぇよ!」

「そうかぁ?」

「おう!なんか、手間がかかってる、って感じ」

「……あー…まあ俺ん家には兄貴もいるからな」

そう言って金井が困ったように笑う。俺はそういうもんなのかな、と思いながら唐揚げを口に入れた。

弁当も食べ終わってしまって2人たわいない話をしていると、机の上に置かれていた金井の携帯が震えだした。メールだったみたいですぐにバイブも止まる。
携帯を見た金井は一瞬、気に止めなければわからないくらい本当に一瞬だったのだけど、わずかに目を見開いた。しばらくの間ボンヤリと画面を眺めていた金井は、「悪い、兄貴に呼び出された」と言ってすぐに教室を出ていってしまった。





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