絶対遵守の王のおはなし
□優しい世界の歩き方
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《世界の果てに、君がいる》
―ゼロレクイエムより7年。
世界は平和に満ちている。
世界中が恐れた皇帝 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの死によってもたらされた世界。
おはよう、ルルーシュ。
今日も世界は眩しいくらいに輝いてるよ。
自室では、自分でいられる。
外に出る時はゼロでいなくてはいけない。
僕も25歳になったが、今でもゼロをやっている。
いや、ゼロとしてしか生きることはできない。
枢木スザクはもういないから。
「…やめよう。そんなことより、今日はナナリーに会いに行く日だ。元気にしているかな」
7年前は、ルルーシュの気持ちを無駄にしないため、無理をして余計に情緒不安定になってしまうことのあるナナリーだったが、今では立派にブリタニアの代表として毅然とした姿を見せている。
足は未だに動かないけれど、光を取り戻した瞳。それには、世界はどう写っているのだろう。
最愛の兄を奪った、冷たい場所?
きっと違う。
最愛の兄が創った、優しい場所だ。
それを、護る為に誰もが前に進んでいる。
「失礼します」
「こんにちは、ゼロ」
ノックをしてドアを開けると、ナナリーは僕を迎え入れてくれる。
ゼロとして。
「久しぶりだな、スザク」
「僕はゼロだ、C.C.」
「そうだったな。まあ、元気にやっているようで安心したよ」
ナナリーと向かい合うようにソファにかけていたのは、7年ぶりに会う魔女だった。
全く変わらない外見。
これがギアスのコードのもたらす力か。
「今日はどうしたんだ?」
「せっかちだな、今度のゼロも。ナナリー、苦労していないか?」
「いいえ、苦労なんて…。私は、立ち止まらずに進まなくてはいけないから、そのためにゼロは必要な方です」
ナナリーは、決して僕を「スザクさん」とは呼ばなかった。
だから、枢木スザクはここにはいない。
「そうか。安心した。今日は、スザクに…ゼロに渡したいものがあって来たんだ。すまないがナナリー、ゼロを少し貸してもらえるか?」
「ええ。私は構いませんわ」
微笑んだナナリーは、最近見せる大人の女性の顔ではなくて、7年前の少女の顔をしていた。