絶対遵守の王のおはなし

□EWig wIEdErkeHReN 〜永遠回帰〜
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《01》


「で、スザクは皇女殿下を押し付けられるわけね?」
「紅月、言葉を選べ」
「あら?何か間違ったかしら?ねえ、スザク」
「いや、間違っていないさ。和議の証とかいって、結局は人質だ。俺はその監視役」
「その歳で妻帯者になるのね。しかも、ブリタニアの皇女殿下相手。大変ね?首相の息子も」
「まったくだ」

ブリタニアを闇に乗じてのっとった日本のエースパイロットは、軽口めいたやりとりで日本の政略を語る。
古くから軍人として日本軍に従事し、年齢的にも落ち着いている藤堂はともかく、並外れたKMFのパイロットでありながら、まだ高校生である年少の二人は今ひとつ自分たちの立場を理解していないように感じられる。

「でも、どの皇女にするかは、選んでいいらしい」
「誰にしたって、無駄にプライドの高い扱いづらい女でしょ?」
「かもね」

ブリタニアの皇族に対し辛辣な言葉を連ねる二人であるが、その実ブリタニア人に特に偏見があるわけではない。

何の因果か、二人はブリタニアの貴族が経営する学校に通っている。
ブリタニア人の友人だっているのだ。
もっとも、二人が日本軍のKMFパイロットとしてブリタニアに攻め込んでいると知られれば、その友情は終わるかもしれないが。
二人は、そんなことはおくびに出さずに学園生活を送ってきた。もちろん、これからもそうするのだろう。

というより、日本とブリタニアが表立って同盟を結ぶとなれば、皇女殿下を娶るスザクはもちろん、実はブリタニア人とのハーフであるカレンも平和の象徴のようなものである。


「明日、ブリタニアに行くことになっている。表面上は、同盟の調印。そして、俺は皇女殿下を見に行く」
「当然、私達も護衛につくことになってるわ」


今更それもないと思うが、明日はブリタニアの軍部も守備が整っているはず。
攻撃をしようと思えば、可能な状況だ。

もっとも、日本の要人の誰かが狙われるようなことがあれば、すぐにカレンか藤堂の手によって粛清が行われるだろう。その上、一人でも命が失われるようなことがあれば、先日のブリタニア本国への侵略の際に仕掛けた装置が作動する手はずになっている。
簡単には動けないはずだ。


「もう少し、つつしみという言葉を学びなさい」

一人年長者として、大人として、子供と言っても通用する若いパイロット二人を注意して藤堂は部屋を出て行った。

「…は〜い。さてと、私も戻ろうかな」
「今日もお疲れ様、カレン」
「おつかれ。じゃあ、最後のシングルライフをお楽しみあれ、我らがランスロット」
「はいはい」


一人残され、スザクは目を閉じる。
明日になれば、世界は変わる。

少なくとも、スザクの世界は。

「…俺は、誰でもいいなんて思わない」

カレンにはああ言ったものの、選ぶとなれば真剣に選ぶつもりだ。
なにせ、自分と生活を共にする相手なのだから。
好きになれる人を選ぼう。

「それくらい、わがままを言っても許されるはずだ」

一人くらい、自分を見てくれる人がいたっていいだろう。
色々な意味で、明日はスザクにとって運命の日となる。





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