N O V E L 3

□ぷりーずギブミー!
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「い、いやだってば!」
「んだよマツ、俺の言うこと聞けねーのか?」
「だっだってぇ…」
「マツ、諦めなよ。僕もそう気が長くないのは知ってるよね」

俺の前には明らかなカツラが頭から取れそうになっている中年。
それも無防備に駅のホームで寝てるわけで。

ダメだよオジサン。起きて!
悪魔の餌食になるってば!

「ほら、早くしねーと落っこちて雑踏にあのまみれてオヤジの大切なカツラが汚れちまうぜ?」
「マツ、優しい君なら出来るはずだよ?落ちちゃう前に取って膝に置いてあげなよ」

明らかに二人の楽しみの為じゃんかー!

「こ、こういうのは公共のマナーとして見過ごすのが…」

「「マツ?」」

「…ご、ごめんなさい」

恐いよーっ!ホントやだ!もうコイツらなんかと一緒に居るのなんて無理!絶対むりっ!
……こ、これが終ったら絶交だっ

「じゃ、じゃあ行ってきます…」
「お、マツお前いいやつだなー 頑張れよー」
「やっぱりマツは優しいコだね」

二人とも口許緩みっぱなし!
目が笑いつぱなし!

「何で俺がぁ…」

そーっと、そーっと。
抜き足、差し足…
あと一歩でオジサンのカツラに手が届く…

もーちょっと……

…掴んだっ!

―ぱち

「…………」
「…………」

カツラを持つ俺。
カツラを持つ俺を見つめるオジサン。

お互い見つめ合う。無言のその間が痛い。痛すぎる。
俺、汗が尋常じゃないくらいダラダラ。
オジサン、ビックリするほどのピカピカ。

嗚呼、オジサンの眉が吊り上がっt

「この不届き者がぁああぁっ!!」
「はいぃぃいぃいいぃ!申し訳ないですぅうぅぅぅ」
「許さんぞ!名前を言え!高校に突き出してやる!!」
「ご、ご勘弁を!!それだけはぁあ!」

顔が真っ赤になるほど怒り狂うオジサンに俺はただ謝り倒す。
駅のホームは騒然としていた。
それは、ある夏の暑い日の事でした。

このっこの恨み、晴らさでおくべきか!

「っ!ブハッ…やっぱマツ、」
「ふふっ…いじめがいがあるね」

それを腹を抱えて笑い転げる二人に、俺はふくしゅーをしてやる!誓って!

ぷりーずギブミー!
俺に愛と勇気と希望をっ!!!



(覚えてろ!怒った俺は恐いんだ!)




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