新 選 組 奇 譚
□世に名を馳せる誠、猫が操る二人羽織
4ページ/4ページ
静寂な宵は、京の気温までは冷やせはしないが、刻を暗く冷やすことは可能であり、生物を静物に誘うように語りーー…
「…総司。」
色々と落ち着き、沖田の部屋へと訪ねた夜は、既に敷いてある布団の近くに静かに座り、沖田と向き合った。
沖田は既に布団の上に座り込み、沖田を支える白い布団は、小さな灯火に浮かび上がり厭らしく存在感を主張する。
「ん?夜さん、どーしたの?」
今夜は一緒の布団に寝ようね、と甘える声で夜に擦り寄れば、夜は沖田の顎をクイッ…と指で掬い、顔を近くに寄せ静かに囁き問いかける。
「…お前、何企んでやがる、」
何でさっき、俺を庇った、と彼独特な妖艶を灯しながら翡翠を見下せば、沖田は其れに僅かに欲情して仕舞い、すぐ側にある愛しい頬を、己の両手で静かにそっと触れた。
「…それとも、バラしてほしかったの…?
嫌だね。貴方の秘密は…僕だけが知ってればいい…」
沖田の翡翠に独占支配の色が混ざり、誰にも教えない、僕がもっと強くなって貴方を守るから、と囁き、夜の綺麗な唇を求め、己の唇をスッ…と寄せていく。
「…誓え、誰にも言うな、」
沖田が寄せる唇を、夜は片手で抑えて塞げば、沖田は不機嫌に眉間に皺を寄せる。
「…反面、僕は夜さんの弱みを握ってるって事だよ?」
「…ほお…、飼い主様に、爪立てんのか、」
己の口を塞ぐ手を掴み退かせ、上目使いで愛しの二色を覗く沖田に、わりー猫だな、躾すんべ、と囁きながら夜は、沖田の頬をつまもうとした瞬間ー…
夜の唇は、チュッ…と音をたてられ、温かく柔らかい感触を味わうのだった。
「…んなっ、」
最後に、舌でぺろっ、と唇を舐められた夜は、いきなり何すんだ!と文句を言いながら、沖田の頬を、むぎゅっと強くつねる。
「…っ、ぃー…」
痛いなー、と自分の頬を擦る沖田は、表情は満足そうに緩んでおり、そして懲りずに夜の腕の中に埋まり「…夜さんの馬鹿。」と続ける。
更には、浮気者、と拗ねながら夜の胸に頭をぐりぐり擦る沖田を、ったく…と溜め息をつきながら頭を撫でてやりながら「あ?しらねーな、」と夜は返すのだった。
あいつ…絶対殺すから!と怒りの表情をしながら説明する沖田を眺め、夜が「あー、ちーちゃん?」と返せば、更に沖田は不機嫌になり「何で、僕の知らない所で仲良くしてるの?夜さんは、僕のなんだから…!」と力を込め思いきり夜を抱きしめる。
猫の独占欲は、鬼にも負けず劣らず。
譲れないものは、譲れないのだ。
案の定、夜から「…ぐえ、」と苦しそうな声があがり、このまま沖田に殺されるのでは、とか考えて居れば、その隙に沖田は夜を布団に引っ張り込み、ぎゅぅっと抱きしめ独占し、そのまま眠りに就いたのだった。
(…ま、バレちまったのは吐血くれーだろ、多分)
己の胸に顔を埋め、すーすー寝息をたてる沖田を、よしよし…と撫でながら、夜は己の体の事を考える。
(…千景に、御礼いわねーと、)
風間と言えば、彼が居なければ今頃どうなっていたか、もしかしたらそのまま御陀仏だったかも、なんて考え、南無南無…と唱える夜。
気を失う前に見た例の口移しの場面は、ぶんぶん、と首を振り消し去るが、血を分けてくれた風間に感謝をしながら、また彼に逢うような気がする感覚を感じ、首元の刺青を指でなぞって、一つ欠伸をし、そのまま眠りに就いたー…
(くぁー…命って儚ねーな、)
世に名を馳せる誠、猫が操る二人羽織
(総司の意地悪)
ーーー
飲みました!
(薄桜鬼×はなの舞 コラボ第6弾)
飲んだ感想は、此の話の、
沖田で表現してみました。