Another country heard from

□月光花
1ページ/2ページ

秋の鮮やかな色彩は、無論、宵さえも舞い踊り、人の目を楽しませる。
涼しく過ごしやすいせいか、酒も絶品であろう夜空の下で「月見だ!」なんて騒ぎながら酒を浴びるのは、京の治安を護る新選組幹部。

「あっ!新八っあん!どさくさに紛れて俺の団子食うなよ!」
ひっく、と言いながら、赤面になり隣にいる永倉に食いかかる平助は、すっかり気分良く酔っ払っている様だった。

「この世はな、弱肉強食なんだよん♪」
にししっ、と笑いながら団子を頬張る永倉は、後に平助の髪をわしゃわしゃと撫でながら放ち、彼も御機嫌そうに酒を浴びるのだった。

こんな感じで、偶には良いんじゃないか?との近藤の許可も降り、綺麗なお月様の下で皆で飲んでいるという訳だがー…。

(なんで団子だべ、大福のほうが福があっていーんじゃねの、)
団子をじっ…と見て、先ほどから団子と睨めっこをしている彼は、なぜ月見は団子で、自分の大好物では無いんだろう、とお酒にも手を付けず、勝手な事を考えていた。

「ま、うめーからいーや、」
結局は、睨めっこの意味は余り無く、そのまま可愛い団子を口に運んで茶を啜った。

酒が苦手な彼…夜は、少し離れた場所で、どんちゃん騒ぎしている連中を微笑ましく眺めながら、大きく輝く月に視線を移す。

自分の片目と同じ色に輝く金は、心の音を落ち着かせると共に、酷く虚無感を産み、何故か孤独感を引き寄せた。

少し離れた場所から、あははっ!と笑いながら程よく酔い、皆が楽しんでいる明るい声が、近くて遠く感じ、夜は1人だけ籠の中に閉じこめられて、声も放てず傍観している様、に思えてくるのであった。

もしかしたら秋の鮮やかな華の舞の裏には、虚無に陥る副作用が存在するのかも知れない。
駄目だ、俺、なんて想いながら夜は、すっ…と目を瞑り暫くやり過ごしていると…

「…ぃっ…!」
己の額にベチンッと痛覚が走り、驚いてすぐさま目をぱちりと開ければ、目の前には指を構えた土方が含み笑いをしながら立っており、夜は、己の額を片手で抑えながら「デコピンするなんて、ひっでーの、」と文句を垂らした。

「なーにシケた面してやがんだ。」
普段から無表情なんだから、今宵くらいは愛想振り撒く事できねぇのか、なんて土方から言われて仕舞えば、夜は、むっ、とした表情を作り、視線の先で忙しく動く、酔っ払ってる幹部連中の世話をしている千鶴を眺めながら、「あんなん、できねーよ、」と零すのだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ