Another country heard from

□紅月光の愛、封印の鈴音
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「お疲れさまどす!」

此処は何時も、華やかな色が鮮やかに舞い散る別格の建物。
そしてある日の、ある暖かい陽気の日。
忙しい合間な僅かな休憩時間の始まり、ある人気を誇る島原の一室で、おなご同士の会議はキャッキャッ!と高らかな話し声を奏でていた。

「新選組の沖田さん、素敵どすなぁ…」
ある舞妓が頬を染めながら放てば、同意の声がキャッキャッ!と更に大きく響き、お年頃な女の口は止まぬのを知らずに、会話は新選組の話題へとなっていったのだった。

新選組といえば、町人からは嫌われている彼らの筈だが、幹部連中に成れば…やはりどうしても美形が多いからだろうか、女性達の色恋の話の話題の人になってしまうのだろう。

(…新選組…)
濃い緑が掛かった色の質の良い髪を持ち、又、花弁のような唇、 可愛くくりくりしている目を持つ未だ幼さを覗かせる可愛らしい舞妓…小鈴は、ギュッ…と胸の前で拳を握り、周りの舞妓達の表情とは逆に、彼女だけは複雑な表情を浮かべた。
さて彼女は一体、新選組と何かあったのだろうか?

「私は、斎藤さん、とか…」
ぽっ、と頬を染めながらある舞妓が放てば、ねー!と同意の声を返すまた別の舞妓が、ふいっ、とまた別の舞妓に話しかけた。

「なぁ!小鈴は誰が素敵だと思う?」
新選組の話になった辺りから、口数が少なくなり俯いていた舞妓…小鈴は、いきなり自分に話題を振られ、ハッとした表情をし「そんな!…うちは…」と、何処か哀しげな表情をしながら、しかしどうしても頬をピンクに染めて仕舞った。

「やっぱり小鈴も…黒崎さん狙いだったりしてなぁ?」
小鈴の受け答えを聞かず、その舞妓が高らかな声をあげ、ダントツに一番人気、新選組の夜の名が出れば、一斉にその場の舞妓のハートは夜一色に大きく深く染まるのであった。

「うち、前に彼のお相手した時に、見事に惚れてもうたわ…」
彼に大福は絶対やわ、と自慢げに放つ舞妓に、他の舞妓は羨ましいと大きく騒がしい声をあげる。
そう、彼は沖田や斎藤やらミーハーな人気とは違い、女心を完璧に鷲掴む完璧なる人気を誇っているのだ。

(夜さんの事…なんも知らんくせに…)
夜の事を、推測であーだこーだ、キャッキャッ!と黄色い声が飛び交い、盛り上がっている舞妓達を端から眺めてる子鈴は、嫉妬を含む複雑な気持ちを抱きながら、黙って話を聞いていた。
どうやら小鈴は、夜に対して、特別な感情でもあるようで。


(今でも、こんなにこんなに愛おしい…)
そんな小鈴の髪では、可愛いお花の簪が、昼は太陽の光、夜は月光を浴びて、何とも綺麗にキラキラと輝いて咲いている。
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