Another country heard from

□丞くんといっしょ
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(⚠︎with市村鉄之助(土方小姓))
(【毒】に微かに触れるお話)


「……なぁ、丞」
「(困惑)」
市村と山崎の2人が休息をとる部屋の襖の隙間から無言で顔を覗かせ耳を垂らしながら目をウルウルとさせクゥン…と鳴く子犬の様な夜に(これでも泣く子も黙る新選組組長)現在、2人はゆっくり休息をとる筈の時間である筈なのに気分は全く心地が良くない。

「…俺は今のこの状況、そして黒崎さんに一体どう反応するのが正解なの?藤堂さん達のようにフランクに接してツッコミして良いの?でも万が一、選択ミスって黒崎さんから、ぶっ飛ばされたら嫌だし…」
「なっ…お前は全く失礼な!黒崎さんは海のように広い寛容な心の持主だ!…多分」(過去のスチルを探る)
「……え?」(過去のスチルを探る)

「………」
「………」

「とっ、兎に角!丞が今すぐに対応してよ!」
「お前の言うフランクに、という注文なら俺は断る。いつも通りに失礼ない様に話しかければ…」
「マテ!あの鬼の副長の土方さんと真正面にぶつかって対等にやり合ったり新選組の鋭利な剣神(若干フィルターかかってます)沖田さんを唯一、腹見せて甘えるゴロニャン猫にさせてしまう黒崎さん!が!只の反応待ちなのか若しかしたら俺らを試してる状況なんだぞ?其れに正直、小姓でしか無い俺が話しかけるなんて畏れ多いわ!」
「(そう考えると井吹はあの幹部達と和気藹々と熟す意思疎通能力は凄かったな…)」
コソコソと言い合い夜の対応で悩める市村を他所目に未だ夜はウルウル子犬モードを続けていた。
ただ単に彼はいずれか若しくは両名からの只の反応待ちなのである。

「黒崎さん…我々に何か御用命ですか?」
此の儘では逆に黒崎さんに大変失礼だと腹を括り静かに放った山崎と其の背に隠れる市村は、こくこく、と首を縦に振るい同調し夜の反応を窺えば、夜は「…やっとか!俺の使い慣れてない表情筋が疲れた、」と反応してくれたと安心したと同時に、お邪魔します、と丁寧に一言伝えては部屋に入ってきた。

「…御用命って、丞くんにとって俺との関わりは仕事前提なの?」
「(丞くん…!?)いえ、決してそんな言葉は…!」
「折角、珍しいカステイラを3人で食べようと思って持って来たのに、」
「わぁっ…凄い!(キラキラ)このお菓子、どうしたんですか!?」
「あっ…こら!鉄之助!」
「テッチャン素直だねー、よすよす
いつもお世話になってる甘味処の店主から一本頂いた。一人で食べるより皆で食べた方が美味いべ?」
「黒崎さぁん!俺なんて今逃したら今後二度と食べれる機会無いっ…!」(抱)
「…海のように広い寛容な心の持主、だっけ?」
「げふんげふん」
「俺、小姓な立場なのでお茶入れてきますぅ〜」(ササッ)


「丞くんも偶には我儘言いなさいな、俺がしっかりと受け止めようぞ、」
パタパタ…と市村が早急に部屋を後にすれば、珍しい組み合わせの両者が面し僅かな静寂が産まれたが、夜の柔らかい雰囲気のお陰で気遣いの緊張も解けた山崎も一つ深呼吸し「それならば…」と前置き、以前から如何せん夜に対する事柄に関して、自身の心の臓を抉り出される感覚に陥る痕跡がポツリ、ポツリと存在していた為、意を決して、故に聞くのなら今が最大の潮合いで有り逃したく無い機会だと彼の甘い言葉に見事に乗っかる。

「黒崎さんの左腕の包帯、いつか俺に解かせ、巻き替えさせて下さいね。…そして何より、貴方が何かを抱え松本先生と供に隠す秘密をも一緒に説いてくれるのを願って。…俺は貴方の力に成る様、医師としても懸命に尽くしますから。」
「……んんっ」
「ーー貴方方は日々血を浴びニオイに慣れ過ぎている所為でしょうか?血液は臭いが残り易く消し難い。其れに黒崎さんの特有の血液ならば人間とはまた話が変わってくる。次いでに言わせて貰えば黒崎さん…稀に血液の後処理が甘いですよ?」
「急にどうしたの山崎」
「…っ、実は、当時の新見さんが研究の傍ら何か企んでいた、という所までは俺なりに情報を掴んで「おっまたせー!土方さん用の高級玉露だよ!」

「〜〜っ、」
「ーーまぁ、せっかくのお菓子時間なんだから先ずは頂こうぜ?因みに市村、もし土方さんに玉露の事バレたら俺も一緒に謝りに行くから安心しな、其れに少しくらい許されるだろ?」
(然し山崎は痛いトコ突いてくるな。さすが新選組の頭脳…)
「黒崎さん…!実は俺もこの玉露気になってて!経費で落ちてる筈なのに土方さんばっかりズルイんだもん。で、でもやっぱり怖いから万が一の時は宜しく頼みます。…って、2人とも如何かした?空気重くない?仕事の話?」
「…全く、一言確認してから入れ。其れに副長は鉄之助、平隊士との仕事量を比べれば茶や菓子くらい優遇され賄われるのは当然。」
(俺なりに深く揺さぶったつもりだがやはり言わないか…)
「丞が土方さんに告げ口しそう…」
「…一応、君の兄と局長には軽く伝えておこう。万が一、法度に触れて切腹する時は仲良く3人一緒ですね。」
「「(真顔でサラリと!?おそろしい子…!!)」」

ーーー

「山崎」
「はい」
「心配してくれて、ありがとう」
「当然でしょう?貴方方は俺の全てなのですから」
「今日一緒に食べたカステイラの味、絶対忘れないでね。寧ろ自身が死ぬ間際に一瞬でも良いから、この光景と共に味を思い出してね。」
「ーー御意。そうですね。おそらく俺にとっては最初で最後のカステイラーー物凄く、美味しいです。」
「…もふっ、俺は寧ろ西洋菓子自体、人生最初で最後になりそうっ〜〜」(じーん)
もっきゅ、もっきゅ、と効果音を鳴らしながら頂いたカステイラは巷の噂に聞いていた通り、彼らにとって頬が落ちそうな程、美味だった。
アクセントになるシャリとした砂糖の僅かな歯触り、中の生地は口に含めば軽くもちっとして美味しく、それでいて高級玉露との相性は抜群で至極幸せであった。


「黒崎さんって隊士の皆さんが言う様に人情味のある人なんですね。忖度で無くて安心しました。」
「…市村、俺の事どんな風に思ってたわけ?」
 

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