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「ーーお前は聞いていなかったのか?なまえに渡せと言っただろう」
なまえに食べさせてやりたかったから態々取り寄せて準備したのであって及川の為じゃない、と続けながら、目の前でバキバキに飴を噛み砕いてゴックン、と飲み込む及川を怪訝な顔をしながら睨んだ。

「(ーーコイツ…!?俺の言ってる意味分かってねぇのかよッ…あのチビちゃんも鉄壁くんも理解してる面してんのにホント馬鹿かよ腹立つ…!あ、美味い)」
上質な飴を噛み砕く背徳感と滑らかな味に、若干苛立ちが収まる及川は、軽くぺろっと舌舐りをし牛島をフンッと見下す。…次いでに隣の岩泉から、自身に対して確実に苛立ってるのも理解する程のオーラが伝わってヒシヒシと痛い、のは黙っておこうかな。〜〜だって仕方ないじゃんか…!なまえは岩ちゃんにだって譲れないんだもの…!あの子は俺のなの…!

「ーー及川、俺がお前に唯一劣っている事があるとするならば、なまえとの親密度だ」
「…は?何改まっちゃってんの?トーゼンだろ。なまえとは産まれた頃からずっと一緒だったんだからな…っ(ピコーン!)フフーン。俺らは風呂だって寝るのだってトイレ行くのだって一緒…ふぎゃっ「〜〜及川マジでヤメロ。ガキん頃の話だろーがっ…!(謂うならばこの人だってそうである)」〜〜ゔぅ、痛いよ岩ちゃん」
「はァ!?ッなまえさんの…っ露な御姿くっそ羨ま…じゃなかった大王様許すマジ…!(ぼふん)」
「ーーなまえは…お前の事をあんな表情でこんな事を言っていた。か弱き子うさぎの瞳を彼処まで変えさせるとは正直、俺はお前が羨ましい。ーーそれだけだがな」
「「「ーーん"ンッ!?(脳内、なまえのエロい表情が再生される)」」」
「ーー?(キョトン)」
「じゃあな」
「〜〜はァ!?ちょ、ま、あ"待てよ牛島なまえの肝心な発言んトコ…!「俺らもそろそろいくぞ」〜〜嫉妬と苛立ちがだだ漏れで怖いよ!」
内容がめちゃくちゃ気になるし牛島がなまえのエロい表情見たなら未だ帰す訳にはいかないし岩泉はめちゃくちゃ怖いしそれ以上になまえが自分を…と考えたらめちゃくちゃ嬉しい及川であった。

◾︎◾︎◾︎

「あ、うわ、ンえっ」
「〜〜あ、っ…!」
何も"前見て歩きましょう"って当たり前なルールは学校のみ適用な訳じゃない。即ち、道だって今居る総合体育館だって適用だ。其れを破ったのは紛れも無い自分であって、俺の身勝手と身長差のある身体にぶつかった彼女は被害者なのだ。考え事をしていて感傷に浸って僅かにぼおっとしていた全面的に俺が悪い。本当にごめんなさい。

「〜〜ッ、ほんっと、すみ、ませーーン"ゥッ!?」
彼女と俺の姿勢確保の為、ぎゅっと抱き締め押さえながらも、つい片手が彼女の片方のマシュマロや大福の類を掴んで仕舞っては、掌イッパイ、いや寧ろ溢れて甘くて柔らかくて貪りたくな…ゲフンゲフン、な感触が広がり、ついデレッとして男のサガで数秒時を無理矢理止め(少しワキワキしたっ)た。あれだ、これめちゃくちゃラッキースケ…じゃ無かったこんな場所で而も良くも知らない俺なんかに触れられちゃってる気の毒な彼女から早く退かないと…!こんなか弱そうな小さな生き物を下手したら抱き潰して死なせてしまう…ッ!

「怪我は、ッありませ…ぬかっ!?」
「あ、あ、ありませぬ!五色くんが支えてくれたので…っ…」
「(〜〜名前ーッ!言い方ーッ!)めちゃくちゃ柔らかかったであります〜〜じゃなかった…ッ俺は馬鹿かー!もう色々とすんませんッ!」
ボフンボフンボフン、と真っ赤に湯気を上げながらピィン!と背筋を伸ばして敬礼する。ーーが、し終わった瞬間、今度は自身の鼻の奥からたらり、と生温かい感触を感じた。因みに、この女性の前で鼻血垂らすのは2回目である。恥ずかしい…!

「わ、わっ、大変…!」
「〜〜ッ俺ってばホント無礼な上に一体何してるんだか…!」
「あ、あの…気にしないで大丈夫だから…!それに助けてくれたんだもん。本当に有難う」
「いやそれは俺がぼーっとしてた所為で…その…」
「…それにね?五色くんは、触ってトーゼン!何が悪いの?(舌出し☆)若しくは、ぽやぽやしてるお前が悪いだろブス(舌出し)対応じゃなくって、きちんと謝ってくれるんだもん。私、すごく感動しちゃった…!優しいんだね…!」
「ーーはい?(何それ誰だよ何様だよ羨ましすぎだろ)」
「〜〜あ、なんでもないの…っ、ごめんなさい…!それより顔見せて?」
「〜〜っ!?あ、あ、あのっ…そこまでして貰うのは悪いので、自分でやります…!」
乳鷲掴んだのにあーなってこーなって最終的に優しいんだね、なんて褒められ感動される男ってそんなんある?ハッ…!まさか或る意味、俺は天に選ばれし人間なのでは…!?(しかもみょうじさんのお墨付き)で、でもみょうじさんはセクハラでも受けてるのか…?ああああ推測で物事を考えれば考える程に許せねぇ…!俺が同じ学校だったらそんな悪魔の手やら意地悪な手から護って差し上げるのに…!くぅぅっ…守ってあげたいこの笑顔…!

「(…セクハラが一番悪いのが大前提だが、彼女も彼女で、うーむ…隙がありすぎる…)」
鼻血を流しながら考え込む五色に対して、自然の流れで自身のティッシュを取り出して五色の鼻にぽんぽんっ、と優しく当てるなまえに接近され、やっと我に返り、ぽぽぽ、と赤面し御礼を伝える。無意識に警戒心が薄いのか、ぽやぽやほわほわしている柔らかな彼女の特色なのかは分からないが、至近距離な彼女との間を上手く確保する。まさか青城はこれが普通なのか?それともマネージャーであれば普通なのか?可愛い豊満の忘れられない感触と、あの牛島お気に入りの彼女の甘い香りと、あまり女性免疫が無い事もあったりと、様々な要因で血圧体温気分向上の為、暫く鼻血が止まらなかった五色であった。

「俺、決めました!極力、貴女を悪魔の手や意地悪な手から護れる様に!不届き者を成敗出来る様に!ボディガードとしてもバレーボーラーとしても名を轟かせます!あのっ…っその…だから俺もなまえさんって呼んでもイイデスカ?」
「?(悪魔の手や意地悪な手?)あ、うん、もちろん!なんだか嬉しいな。あのっ…私も工くんって呼んでも良い?」
「〜〜っハイ、はいっ…!ハイ!」
「(目がキラキラしてる子犬ちゃんみたい…!すごく可愛い…っ!)」

◾︎◾︎◾︎

(⚠︎︎二口くんルート)(医学生)

「ーー白布賢二郎です。宜しくお願いします」
「あ、はい…!みょうじなまえです!此方こそ宜しくお願いします」
実習に入るなら名の通った病院が良いと思って選択した場所には俗に言う運命の巡り合わせなのか、あの青葉城西のマネージャーだったなまえが居て、しかも実習期間及びバディが見事に被り共に主に組む事に成った。白布となまえの意外なる関係性のきっかけと云えば高校時代に牛島からの紹介での繋がりからだ。牛島を慕う白布とは必然的になまえとも顔を合わせる機会が増えて、その中で何度も勉強会を共に顔を合わせ交えた事もあり、その際に互いに医師を目指して居る、と云う事をも知り得るのだ。ーーそしてこれは何かの成り行きで後から知った事だが、自身にとって高校最後のインハイ予選だったのにも拘わらず、優勝旗を見事にぶっ取られた、烏野じゃねぇ大して気にも止めてなかった学校の主将のカノジョ、だと云う事だった。先ず、あの学校の試合専攻スタイルから舌打ち案件だった。その上、面子全員が鬱陶しい程に気迫に満ちて居た中で、特にあの主将の鬼迫が一々癇に障って目障りで仕方なかった。何よりセッターであった俺に対して、あの野郎は非常に腸が煮えくり返る程にストレスを与えた。クソウゼェ、ってヤツ。ーー兎に角、思い出せばイライラして結果として頭にこびり付いて忘れられないのである。だから腹の何処かであの野郎の彼女であるみょうじさんを独り占めしてる感覚にして(※実習期間ではあるが)ほくそ笑み、つい意地悪な質問をふっかけてみた。

「実習始まってからみょうじさんはずっと俺と一緒ですね。俺との朝帰りだって普通だし」
「?そうだね。白布くんが一緒で心強いなあ」
「内心、妬いてるんじゃない?…フタクチ」
「えっと…?ううん、彼は私の事を理解してくれてるから」
「アンタと俺が二人で夜な夜なナニしてるかヤツにイチからジュウまで説明しようか?ーー喜べよ、アレの本性暴けるぜ」
「ふふっ、心配してくれて有難う。ほら、白布くんはそろそろ仮眠の時間だよ?少しでも眠れる時は寝ないと…」
「(チッ、つまんねぇ女。面白くねぇ)」
だって奴と一緒に住んでるんでしょ?なんて続ければ、なまえは、ふわりと微笑みながら白布の放つ言葉に軽やかに当たり障り無い様に躱し、そして体調を気遣い白布を仮眠する様に促す。確かに彼女の言う通り少しでも休める時に休まなきゃ斃るので欠伸しながらベッドに行き早速仮眠をとり、起きた後は、既に課題を完璧に終わらせていたなまえと交代する。何で今日に限って作業部屋と仮眠室が一緒になってる部屋に、男女二人きりで押し込められてるのかは知らないが、正直言えばやめて欲しい。…まぁ、実習で来てるから仕方ないけど。

「(の●太だな…)」
なまえの入眠まで入る時間は驚く程に短い。おやすみなさい、からのワンツースリーである。そりゃまぁ疲れるもんな、なんて適当に流しながら珈琲に口をつけ提出資料を纏めていれば、鈴を転がす様な小さな声で「…けんちゃん…」と聞こえて、白布は肩を跳ね上げる。

「(は?え、何)」
ついドキッ、と心臓を高鳴らせ仮眠する彼女に目を落とせば、すぅ、すぅっ…と小さな呼吸をしながら子うさぎの様にベッドに丸まって居た。くそ可愛ーーじゃなかった。なんだよ寝てるのに何の嫌がらせだよ、と頬に熱を帯びる自身にも腹立ち睨みながら、華奢な身体から摺り落ちそうになるタオルケットを彼女に掛け直してやる。

「…むにゅ……けん、ちゃん…だいすき…」
「ーー俺は、アンタが嫌い」
あー、ナルホドね。と納得し、自身が今素早く調べた当時の伊達工の検索表示画面を映すスマホ画面が、茶色く薄暗い部屋の空間の中で静かに滲む。ぽわり、と浮かぶ淡い境界線には、すやすや…と安心しきる眠り姫が儚く映り、此の儘キラキラ…と透明になり消え入りそうな彼女の天使の輪を僅かに手を取り、挟んだ親指で柔らかな束を小さく掴んでは擦った。雪の結晶の様に透き通る肌、桜桃のぷるぷるした僅かに開く美味しそうな薄ピンクの唇、艶やかにくるんとした睫毛と伏せて影を作っては、事細かに繊細に描いた可憐で麗しい一枚の絵画が、白布の心に純白の羽と梯子が注ぎ内緒で飾られ、又、彼は誰にも知られぬ様に閉じ込め施錠し厳重に保管するのだ。
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