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(なまえさんやアランくんにしか見せない甘える双子の一面)(時期は医師成り立て)

「なまえちゃん、今日も寒いからハグしてあっためてや〜」
「すまんな、なまえちゃんに逢いたくて来てもうた」
彼女(モノホン)をこの目で確り眺めては霆が全身穿いてからと云うもの、春高期間中に於いて何かしら理由付けて空いてる時間僅かな時間を見つけては、フリフリと狐の尻尾を振りながら美味しそうで愛しい垂れ耳子うさぎに媚びに逢いに行く(後から大体、北さんに"彼女に迷惑掛けんな"と幾度も叱られるのだが)ーー其して時は数年経ち、アスレティックトレーナー岩泉曰く"大人"に成った現在も、当時と変わらずなまえを見れば本能には逆らえずに尻尾をフリフリし、肉食なる狐が小さなうさぎに媚びると云うおかしな絵図が出来上がる。

「侑くん、治くん、こんにちは。今日はちゃんとマスクの予備持ってる?季節の変わり目だから風邪予防も意識しないとね。…あの、治くんは売店の方は大丈夫なの?」
「おん。今パートの人にお願いしとるし俺は今、休憩中や。ほんで仕事頑張ってるなまえちゃんにおにぎりの差し入れ。ほい」
「わぁ、私の大好物ばっかり…嬉しいな!ありがとう」
「ええって。なまえちゃんにはいつも世話に「フッフ。なぁなぁなまえちゃん?俺は唇塞ぐならマスクよりなまえちゃんのチューがええな?」ーーっぐ…!」
「…もうっ。そういう事は言わないの。…っ…なんで侑くんはすぐに頬擦りしそうになるの?だ、めっ…」
「ええやん。そんな照れんといて?俺となまえちゃんの仲なんやから〜…あたっ☆」
「(ムスッ)〜〜おいコラ。ツムええ加減にせぇよ。歳と身体だけデカなってほんま精神年齢変わらんな」
「なんや、ええかっこしいが。俺ら選手には差し入れ無いんかい」
「〜〜なんやかんやでいつもやっとるやないかタダ飯食いが!今までのツケ今月のお前の給料から全部差っ引くからな!」
「「ガルルルル…」」
「…あのね、3人でお部屋から出よっか?」
「「御意」」
治となまえの和やかな会話を遮り、隙あらばなまえに密着しようとする侑に対して両手で抑え更に調子にノる侑の頭を軽くこつん、とするなまえである。侑は侑でそんななまえが幾つに成っても可愛くて仕方ない。そんな関係性も数年経ち尚且つ経験を積めば、侑や治に対する関わり合いや遣り取り、手綱の握り方もお手の物であった。この様子だと双子は医務室に用事が無さそうと判断し、いい加減制止を掛けなければヒートアップしそうな雰囲気なので、なまえは騒いでスタッフや他の皆様に迷惑掛けては成らないと思い 、双子の大きな背中を優しく押しながら部屋の外に出る様に促す。

「ほんで、なまえちゃん。牛乳パンといつ別れるん?俺ずっと待っとるからな」
「(牛乳パン…)えっと…侑くん、ごめんね?何度も言うけど私もう結婚して「ええねん!なまえちゃんがバツイチでも何でも俺は全部受け入れたる!気にせんしかまへんよ!だからアレに愛想尽きたら即俺ん所来るんやで。ええな?」ええ、と…一生無いかな」
「ぐぅっ…そんなええんか牛乳パン…!アレの何がええんや…!」
「(ツムも執拗いのう…頭では分かっててもなまえちゃんの口から改めてハッキリ言われると堪えるから止めろや)」
特有の雰囲気で話題を上手く変え、最終的には仲良くジャッカルポーズを三人で撮影したいから、となまえからの可愛いお願いに「そんなんお易い御用や」と鼻の下を伸ばしながらデレッと応じる侑、なまえを真ん中、治は照れながらも片手で上手くスマホを触り撮影、手を掲げて仲良く、がおーっ、とする仲良し写真がパシャリ☆と完成する。

「ふふっ、侑くんの舌出し可愛い」
「!?可愛い、ってなんや…!なまえちゃんなんか、がぶっと丸呑み喰っちまうでーーむぐっ…!」
「あとね、治くんの照れ顔いただきました…此方も可愛い!やっぱり筋肉凄いね」
「そらそうや。毎日お米さんどれくらい可愛がっとると思っとるん。ーーなぁ、及川さんの腕と俺の腕ドッチが好き?」
「それはもちろん徹くんの腕です(ぽっ)」
「(ピキン)ーー上等じゃ。いつかヒィヒィ可愛がったる…!」
なまえは、意地悪な侑の口を小さな手でぺちん、と塞ぎ適正な距離を保ちながら(治自身だってアタックする侑にモヤつきながらもやっぱり何処かで及川に対抗したくて質問して仕舞う)悔しがる治と和気あいあいと写真を眺めながら休憩時間を楽しく過ごしていた。勿論、この写真は双子のやる気スイッチの待ち受けに成ったとか。

◾︎◾︎◾︎
(佐久早聖臣はなまえの魅力が全く解らない)

「俺の知る何匹のモンスター共を簡単に手懐けてるけど、俺はアンタの何がそんなに魅力なのか正直、考えても解らない。だったら一体、何を隠し持ってるの」
「「は?!」」
なまえの仕事であるメディカルチェックの際に(寄りによって特に強く反応し噛み付きそうな日向と侑の前で)佐久早からサラり、と放たれたなまえは、ぽやん…としながらもつい肯定する返事をして仕舞うのだ。

「ちょっと待ってクダサイ聞き捨てなりません…!佐久早さん、何言ってーー!?」
「なまえちゃんの事何も知らんやないかい!」
「コレ(日向)もコレ(侑)もアンタにゾッコンだけど本来なら寧ろ苦手な女のタイプでしょ?」
「〜〜勝手に決めんな…!なまえちゃんはタイプとかそういうんや無い。遺伝子が欲しがっとるんや」
「ーー宮お前、何恥ずかしい事言っちゃってんの」
「ッ…!俺ん事は周囲に分かって貰おうなんて思っとらん、けど…っ」
「仰る通りです。ふふっ、期待する様な物は特に何も隠し持ってたりしませんが、二人に対して普段からお世話に成り今でも変わらず仲良くして頂いてる事に感謝して、可能な限りは言葉や態度でたくさん伝えたい、とは思っているよ。…はい、皆さん体調は問題無いですね。今日も怪我しないように気をつけて行ってらっしゃい」
プンスカ怒る双方を優しく宥めながら、ふわり、とした彼女特有の笑顔で優しく手をふりふりと振り、何時もの如く和やかに見送るなまえを背にし、なまえに対して向けていたほやぁッ、とした表情をガラリと変えた日向と侑は、メンバーだけで廊下を歩きコートへ向かう最中でも気持ちの切り替えが出来ずに、佐久早に対して未だに執拗く口出しを止めずに居た。

「あのさ、お前らが何でそんなにムキに成ってんの。てか彼女は既婚者でしょ?彼女の旦那から言われるなら未だしも、お前らは其処までの関係じゃ無いじゃん?」
「臣くんこそ何でなまえちゃんにあんな事言ったんかさっぱり解らん…俺らがワイワイ騒いで煩かったんか?ほんならいつもみたく直接、俺に言いや」
「(お前の目の色をそんな風に変える、そういう所だよ)別に…妖怪共を手懐けるあの人が一体、何者なのか知りたかっただけだろ」
「先ず手懐けるってなんやねん。聞き方っちゅーモンがあるやろが!」
「ーー佐久早さんは、大衆の面前で初めてあった人のゲロを自身の鞄からビニール袋取り出して、素手で袋広げて吐き出された物を全て受け止めて、更には目の前の相手を気使って後始末まで出来ますか?自身の持ってた未開封の飲み物を"脱水症状が怖いから"と与え渡せますか?ーー素面な自分なんかは特に周囲の視線を浴びて恥ずかしい思いをしてる筈なのに、そんな迷惑掛けた元凶がその場で言葉でしか御礼を伝えられ無かった。それでも試合出たいんだ、と言い出す我儘な相手に対して、見捨てず呆れず最後には"上を向いて"と優しく涙を拭いてあげて励ませますか?」
「!?(ゾッ)…絶対無理気持ち悪…彼女、そんな事したの?」
「ーーほなそんなん言うならオマケにもう一つ。暴れ狐二匹同時に鼻血や口内出血の手当はどうや?…今みたいに医者や無いんやで?」
「…嘔吐物に血液…ゾッとする…」
「(未だ往生際が悪く)悔しいですけど"あの"及川さんの身体や精神、人生の全てを支えている奥さんですよ。即ちその事実が全てを物語って居て、要は俺ら妖怪共が彼女に対して惹かれる理由の根幹も其処に隠れてるんじゃないんですかね?」
「あー、もうワカッタ…彼女に対する懐き度や忠誠心は俺の想像以上、って事で良い?」
「では、理解して頂けたのなら後で必ずなまえさんに謝ってクダサイネ?」
「は?なんで俺がそこまで…(溜息)」
「ーー俺、ちゃんと見てますから」
「(こういう時の翔陽くんの目、怖いわぁ…)」

◾︎◾︎◾︎
(兎と垂れ耳子うさぎのお食事タイム!)

「なまえちゃん先生ー!」
「木兎さん、こんばんは。今帰り?」
「そうそうー!あ、そうだ。良かったら今からメシ行かない?今めちゃくちゃ焼肉食いたくてさー!…あ、俺と二人きりだと旦那さんに叱られちゃう?」
「ふふ、お気遣いありがとうございます。お仕事の御付き合いだから大丈夫だよ。…でも今から主人に電話で連絡するからちょっと待ってて貰っても良い?」
ごめんね、と木兎に対して丁寧に断りを入れ、その場で及川に連絡し約束事を守る条件の基で許可を得ては、木兎とガッツリ焼肉を食べに行く事になった。

「(ハッ…!?もう店に入っちゃったけど嫌じゃ無いかな…?今更過ぎるが此処で良かったの…?助けてあかーし!)」
木兎は、なまえを焼肉に誘ったは良いが、なまえの華奢な身体や綺麗な格好、彼女が纏うほんわかな癒され雰囲気や見た目からして、もっと綺麗でお洒落なお店セレクトの方が良かったのではなかろうか?今居るガッツリ焼肉で嫌じゃないのか?なんて徐々に不安に襲われつい心内で赤葦に助けを求めるが、なまえの嬉しそうな表情と見事なお肉の食べっぷりに心から安心し二カッ、と笑うのだ。

「おいしい〜…♡やっぱりお肉にはお米が合うよねー!」
「だよなー!…俺の高校ん時のマネちゃんで、なまえちゃん先生と同じくらい食べっぷり良い子が居たよ!今思えば二人の雰囲気も何となく似てるし仲良くなるんじゃない?」
「ふふっ、そうなんだ?いつかその彼女にも会ってみたいな」
「おう!もし梟谷で集まる時はなまえちゃん先生にも声掛けるから来てな。つーわけで、仕事で日本に居る時は俺にも教えてよ」
「いいの?わぁ、ありがとう…嬉しい。梟谷かー…木兎さんの高校時代のお話ももっと聞きたいな。あ、このお肉美味しそうに焼けたよ!はい美味しいうちにどうぞ」
「サンキュー!…俺も青葉城西の事すげー聞きたい。試合してみたかったなー!岩泉のエースの心得、痺れそうだな」
「ふふーん、はじめちゃんは青葉城西のスペードのエースですよ?あのね、相手のコートにボールを突き刺すスパイクは凄くかっこよくて…!」
「ハハッ、それはカッケーな!(なまえちゃん先生、スゲーきらきらしてる…更にマブい…!)」
元気玉な彼と居る時は、此方も元気を分け与えられ且つ高校時代に戻った様な、シュワシュワ…と淡いラムネサイダーを背景にとても心地よく懐かしい当時の情景や気分を思い出させてくれた。可愛い後輩達は元気かな?等と懐かしい想い出にもとっぷりと浸れ、日本に来れば行きたかった焼肉も頬張れてなまえにとっては有難く満足な晩御飯の時間を過ごした。

「あのさ…!綺麗な洋服だし汚さない様に気をつけろよ?…あ、そっか!汚れない様に俺の上着羽織る?」
「紙エプロンもあるし汚さない様に気をつけるね。色々とお気遣い有難うございます。お食事にがっついてごめん…!美味しくて美味しくて…端なかったよね?恥ずかしい…」
「いやいや、食い方スゲー綺麗だよ。御嬢様って感じで!」
仕事上での食事の御付き合いの機会と成れば、やはり高級鉄板焼きやお寿司、ディナーと云った食事と成る事が多いのだが、其れとはまた異なる現在の様な大衆向け焼肉なるガッツリした食事に気兼ね無く誘ってくれる相手は、なまえにとっては有難く貴重であるのだ。木兎に態度や言葉でも感謝しながら途中にアイスクリームを挟んで気分もさっぱりさせた後、お肉を追加注文しては鼻歌を混じえながら、美味しそうなお肉を丁寧に焼き始めるのであった。
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