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ぴょこぴょこ動くなまえちゃんを見てると何だか悩みなんて吹き飛んじゃう、なんて花巻や松川は微笑ましい笑みを浮かべながら、垂れ耳子うさぎ化する小さな頭を優しく撫でては蝶よ花よと可愛がる。そんな彼女の桜桃の唇から放たれる「貴大くん」「一静くん」がそりゃもうウーン、と唸るほどに可愛くて可愛くて。強いて言えば身体の芯からポカポカ癒される。繰り返す当たり前であって実は貴重な日々は実は有難くて、尽く彼女には感謝しかないのである。故に此方からしても感謝と愛でる想いを共に乗せて云わば大好物を与えてやりたい、と願い思うのだ。餌付け?下心?おいおい人聞き悪ぃな!純粋なる心持だよ。
(甘やかしの種類問わず)僅かにでも手ぇ出しゃガルガル牙を向ける岩泉から”なまえを一々甘やかすな!”なんて日々お叱りを受けるが(アイツ絶対嫉妬だろ)ノンノン、甘やかすなんてとんでもない。女神への献上よ?寧ろ何がいけないの?大体、何だかんだ一番ゲロ激甘いの岩泉ですよね、なんて頭の隅に置きながら、さてそうと決まれば今日は何にしようかな。チョコかアイスか将又ラーメンか?と脳裏に巡らす。何れにしても渡せばキラキラと飴玉の大きな瞳を輝かせながらぴょこぴょこ喜ぶ可愛い顔や姿を見たら此方もトロンふにゃん、となって仕舞うのは彼女の専売特許であろう。此処まで長々と尺を巻かずに俺らの気持ちを語ったが(だってやっと巡って来た貴重な俺らのターンなワケじゃん!)なまえちゃん、マジですげーわ。あーあ、いつか(予想だけど近いうちに)この子は誰かの専属女神になっちまうんだろうな…そうなれば今のように簡単に触れられなくなるんだろうなぁ、めちゃくちゃ寂しいなぁ、腹立つ嫌だなぁ、なんてモヤモヤなんかが生じて仕舞うのは、如何せん腹ん中だけにしとくからどうか許して欲しい。ハンカチ噛み締めながらの予想の予想であってクッソ腹立つけど、きっと及川か伊達工の二口だろうな。ああああ快便野郎×2が!やっぱり奴ら今のうちにさっさと畑の肥料にするべきか!

「おお、なんとまぁ結構な量のお菓子だね。フフン♡花巻と松川が全部食べるの?」
「(はいキター)〜〜クッ!聞かなくてもわかってるだろーが。なまえちゃんに(一つでも多く)御献上の品々だわ。…なのに、お前ら含めて周りの奴らがあっという間にヒョイヒョイ取ってくんだよ…!」
「大方、別の胃袋に入っちゃうパターンは本日も安定。ほんと花巻は良くも悪くもタイミングイイよねー。さすがなまえちゃん曰く”海の男”」
「チョーっ松川、それ今が使い時じゃないのよ!」
「ま、何れにせよ私らも毎度菓子貰って悪いねー?頂きます☆…てかいつも思うけど、あんな(青城名物)動物園をみょうじさん一人でマネージャー務まるよね?私、最初はどうせアンタらが鼻の下デロデロに伸ばして可愛い小悪魔に鞭で叩かれて上手く扱き使われてるのかと思ったけど、そうじゃないんだもん。いやービックリだわ。みょうじさん決めつけちゃっててゴメンよ、マジでリスペクト」
「えー?動物園つーよりマフィアじゃない?因みにみょうじさんが女ボス」
「まァっ、この子達ったらナンテコト!?キラキラ青春詰め合わせバレー部、まさにジャージの色通りのラムネの如く爽やか象徴よ!清涼飲料水のCM若しくは教育番組に出演出来そうでしょうが!」
「え、いやぁ…ある動物園の一日の紹介なら…あ、それか自然系番組ならジャングルかサバンナなんてどうよ?解説やらは専門家のみょうじさんをお呼びしてさ〜」
「掻き集めた結果、即ち我々をワイルド男子と褒め使わせるって事でヨロシ?」
「ーーま、我々のボスに鼻の下デロデロに伸ばしてるのは强、間違ってないんじゃない?ほら、彼女には誰も逆らえないんだしさ」
「花巻の方見てプークスで申してるとこ悪いんだけど私らから見たら松川も大概よ、と言わせて貰う」
「分かる分かる。みょうじさんと二人きりで話してる時に松川もデレッとしてるよね。特に感情が眉毛に出てんのよ?ピクピクしちゃってさ」
「「(菓子取り放題言いたい放題だな)」」
「マフィアの件ならさ、高級椅子に座るみょうじさん取り囲んで黒スーツ水色シャツのアンタらから銃向けられるんでしょ?ーーうわ、特に松川なんか様になりすぎてめちゃくちゃ怖ッ!敵に回したくない!」
「フフ。俺は女王の足ですからネ?ボスの綺麗な御御足を護るとなれば更に容赦無いよ」
「なるほどね。両手は及川岩泉?んで両足は松川花巻ってコトね。側近護衛すっご」
「及川はボスの愛人ポジでしょ?きっと必死に尻尾振っても報われないの」
「「(及川アーメンざまぁ)」」
「てか花巻は”御褒美♡”とか言われてあの御御足で踏まれたいんじゃないの?しかも細くて高いピンヒでグリグリと。あぁ、ついでに及川も然り」
「あ、ワカル?」
「一人だけ脳内でお花巻き巻きして特製綿飴作ってんだけどー!」
ある休み時間に生じた花巻松川と女子数人を交えてのキャッキャ会話である。青葉城西男子バレー部の傍から見た好き勝手なるイメージをダイレクトに伝えられては鼻水吹き出しそうにはなるが、ナルホドとワクワクが混濁し最終的にはニヤニヤと妙に納得するのだ。なんつーかほら、ソレって俺らめちゃくちゃイケてるってコトじゃん?ほらアレよ、思春期男子の心コチョコチョくすぐられる的な?

ーーー
ーー


「コッチに撃たないでね?撃てないよね?」
「〜〜ンとに敵に回したくねぇわな!(ヒュン)」
「うぇーい!マッキー隙あり〜。バァーン」
「わぷっ!?鼻に水が入っただろーがズリーぞ及川!おのれ小癪な…御自慢の(ちょびっと羨ましい)髪のセット一秒で濡らして崩してやるぁッ」
「ハンッ!俺を誰だと思ってんの?ちょちょいのちょいで直せるもんねー☆やーいアッカンベー」
「あのねぇ花巻クン及川クン、銃ってのは君たちの様なお子ちゃまが扱う代物ではないんだけどね?」
「ーーさて、チャンピョンの登場だ。全員纏めてひれ伏せて床の雑巾になれ」
要は護衛力を強める為にはバレーと同じく日々鍛錬が必須であると云う切っ掛けから、岩泉の腕をグルグルパキパキと鳴らすのを指揮にし、何を血迷ったか男達は水鉄砲を格好よく構え、中身をビュッ、ビュッと放ち互いに水を容赦無く当てて、最後にはマフィア風に最高にキメた格好(銃口にフッと息)とキメ台詞を吐き(実は)ワイワイと楽しく遊ぶ彼らをちょいちょい見受けられる様になりプチ名物になる。
現在に於いては、最初は中庭で遊んで居た筈が僅かながら校内の床に水が掛かって仕舞っておりますが、さて、如何したものか?岩泉の言う様に誰が雑巾に成るのかは知りませんが教員にバレる前に必ず濡れた場所は拭いてくださいね。

「ウーン…やっぱりさ、ウチの男子バレー部は3年筆頭に賑やかな幼稚園です、って紹介した方が正しいよね?」
「あー…はは、みょうじさんには園長を頼むしかないなー」
「及川がモテるのが本当にわかんない…アレで本当に高3なの?」
「残念だけどありゃ愛人までも行かないだろうなぁ…」
そんな彼らを見ては発端となった女生徒達からはコッソリと別の案を考え言われていたのだった。
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