拍手御礼

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「白布さんって彼女居ないらしいよ」
「…私にもチャンスあるかな?顔綺麗だし医学生で将来有望だし…!」
「えー!抜け駆けずるーい!」
「私、食事に誘ってみようかな?」
ーー聞こえてんだよ、なんて若手看護師らの耳障りなキャッキャした疳高い声に呆れ乍も眉間に皺を寄せては、栄養ドリンクをグッ、と喉を鳴らし舌打ちと共に胃に流し込んだ。…げろ、安定のケミカルと癇が混ざって尚更クッソ不味い…!

「……コレ、先程の資料デス」
俺自身は(仕事の事情により)日光にあまり当たってねぇから知らないが、腹立ち羨む程に本日も引き続きお天道様はニコニコらしい…なんて、現在実習で訪れている此の病院の、広い院内待合室に設置されている複数のテレビから流れる予報士の声を聞いた事を瞬時に思い出す。
それならコチラも負けずに、と二徹した顔で(ドス黒いオーラを纏い)ニコニコしつつ若手看護師に資料を手渡し所謂"報連相"を熟しては直ぐに立ち去って頂いた。ーー大体、そんなくだらない事言ってないで自分の未熟な腕を磨けよ。現場でイチイチ流れが滞って小さな支障が出て段々と苛ついて来るんだよ。

「(ーーよし、今日は大体落ちついた。ッあーー疲れた…脳味噌が糖分を欲している……どうしよ…無性に彼女特製のフルーツサンドイッチが食べたい。……フルーツサンド、かぁ…院内のコンビニにあるかな…今から買いに行くか)」
看護師らを立ち去らせ最終的に一通り自身のスケジュールや提出資料等を再度確認し、やっと一息出来る時間が訪れれば、はぁ、なんて深い溜息を零しながら資料やノートをデスクに置いてコンビニに行く為に多少なりとも身軽にする。
「疲れた時には甘い物が一番だよね」なんてぽやぽやする彼女が、何度か手作りで"いつもお疲れ様"と持って来てくれるサンドイッチは身体が跳ね上がる程に身体に染み渡って感動し美味しかった。自分だって疲れてるのにな?先ずは自分を存分に労れば良いのに、なんて、そんな事を思い出しつつも、故に本来であれば彼女の手作りが良い、なんてつい溢れて仕舞った願いは瞬時にパッパッと消して部屋を出ようとドアノブに手を掛けた瞬間、ドア越しから頃合良く彼女特有の控えめなノックが鳴った。ーー自身でも無意識的に彼女の特有を探しながら少しずつ知り得ては、フルーツサンドイッチの如く挟み重ねて出来上がっていく(勝手に)満たされる日々が心地好くて僅かにも心の拠り所でもあった。彼女にとっちゃ身勝手されて嘸かし気の毒だろうけど。ーー普段、アレヤコレヤナンダカンダでコレもオタガイサマだろう(自己解決)

ーーでも、決して忘れては成らない、常に戒めておくべきである真実がある。

「アンタか。どうしたの」
「すごい。ノックだけで私だってよくわかったね?ーーあのね、今時間ある?」
「今から貴重な休憩時間です。至急じゃない仕事なら時間内に出直して」
「ふふ。休憩時間はそろそろかなぁ、と思って伺ったの。今日ね、フルーツサンドイッチ作ってきたんだ。良かったら今から一緒に食べない?」
「!!〜〜急いでお湯沸かすから部屋入って」
云わば戦友に近い彼女とは互いに何かと協力しながら結果親しくはしているが、其れはきっと先程言ったオタガイサマなんかじゃない。ーー現実として彼女から与えられる事の方が多いのだ。彼女の真心である最早、超能力者なる領域な心遣いや心配りに生クリームと共にサンドされて心の拠り所になるのならば、俺自身が真実の一線を護りつつ何時か彼女に与える真心を返せる時が訪れる日まで、熟れた苺を摘んで準備しカットして下拵えをしておこう。

「ほら、コーヒー…インスタントで悪いけど」
「白布くん、ありがとう…うーん…やっぱり良い香り…!私も今の飲み終えたら今度からこのコーヒーにしようかな?真似して良い?」
「なんだそれ。コーヒーまで一緒かよ」
俺が俺なりの手法や腕で彼女の笑顔を護る為にはこの方法ならば至って正解かーー日々、そんな事を想うのだ。

(#白布賢二郎と女の子)(#コープス・リバイバー)

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