novel

□±ゼロ
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「あっ…」


彼と闘っていた時、急に強い風に襲われた。

頭を押さえ、振り返った時には既に自分の元から離れたそれが視界に飛び込む。

目の前に敵がいるにも関わらず、リンクは後方を向いて走り出した。


闘う…と言っても、勝敗を目的としたものではなく、本試合に向けての練習のようなものだ。

だからこそ彼…マルスに背を向けて、リンクは今しがた風により飛ばされた自分の帽子を追った。


「あ〜ぁ…」

彼は苦笑混じりに動きを止めた。

今にも斬りかかろうとしていたマルスは剣をしまい、下を覗き込み残念そうな様子の勇者に歩み寄る。

いつもかぶっていた帽子を外した彼は、帽子を脱いだとき特有のボサボサの髪を整えもしないまま、ステージに寝そべり下を覗き込んでいた。


「落ちちゃいましたか」


暗く、底が見えない下を覗き込んだまま顔を上げないリンクにマルスは声をかけた。

強い風はあの一瞬だけだったのか、風の影響をもろに受けそうなマルスのマントは其ほどなびいていない。

「どうせ貴方が落ちれば元に戻っていることですし…気にすることないですよ」

「…そりゃそうだけど…」





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