よろず部屋

□パロパロ
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狡噛大尉の挑発行為で大乱闘が始まったよ〜。ってトコから。

「ちょっ、とっつぁん!トシ考えろって!」

「縢!こいつが黙って見過ごせられるか!?義を見てせざるは勇なりけりと言うだろうが!」

「何だよ!?その呪文わぁ!?っていてーな!何しやがる!!」

征陸を止めに入った筈の縢も、殴られ、反射的に殴り返し、でいつの間にか乱闘の輪に加わって行く。

実の父の年甲斐も無い参戦に、狡噛の脱ぎ捨てた上着を持つ方とは逆の手で頭を抑え、宜野座は深い溜め息を吐いた。

その隣では、唐之杜が誰彼構わず黄色い声援を送り、更にその横では宜野座と同じように頭を抑えた六合塚が、「男ってホント野蛮…」と呟いている。

全くだ。

宜野座は声には出さず、心の中でだけで同意を送る。

視線を移せば、輪の中心部では狡噛が嫌に発達した犬歯を剥き出しにしながら、実に楽しそうに殴っては殴られるを繰り返していた。

その背を護る為に己が命を投げ出す覚悟など、当に出来ている宜野座だが、だからと言って彼の子供染みた道楽に付き合って余計な怪我をしたい訳ではない。

そう思う自分は、男として何処か欠損しているかもしれない。考えないでも無いが、思い悩む以前に宜野座は己の役割を良く知る者であった。

手首のデバイスで時刻を確認する。

そろそろ頃合いか…。

音にはせず、口先だけで呟いて、宜野座は腰のホルスターから銃を引き抜いた。銃口を上へと向けると無造作にその引き金を絞る。

―――パン!!

一発だけの乾いた音は、ともすれば喧騒に掻き消されそうではあったが、そこは銃声に対する反射を骨の髄迄染み込ませた男達である。
一瞬にして落ちた静寂と場を支配した緊張の中、銃を上向きに構えたまま注目を集めた宜野座は普段通りの声を響かせた。

「空砲だ。さて宴も酣だが、後15分で交代時間となる。各自、己が私物を回収後、速やかに担当部署に赴き、任務に着く事を推奨する」

「宴も酣ってお前…」

呆れたような、何処か気の抜けたような征陸の言葉に誰かが吹き出し、次の瞬間にその場の空気は一気に砕けた物となる。

今し方迄殴り合ってた者同士が笑い合い、肩を組みながら任務明けの酒の約束を交わし、また多くの者が、脱ぎ捨てられ乱闘の最中で踏み付けられた上着達の中から大慌てで己の物を探し出し、それに袖を通す間もなく駆け出して行く。

「いっやぁ、アンタ、大人しいだけの副官だと思ってたら随分と思い切った納め方するじゃねぇか」

宴も酣ってのは良かったなぁ!上機嫌そのものの声を掛けて男に宜野座は身体毎向き直った。

赤茶けた短髪。その陽気さは軽薄と紙一重のように見える。だが、一人で多勢を相手にしようとしていた狡噛に、真っ先に加勢したのは彼であった。名は佐々山光留。今は肩に引っ掛けて居る上着の階級章は記憶違いで無ければ。

「佐々山軍曹!」

「うん?」

「アテンション!!」

鋭い号令に、佐々山のみならず、周辺の者達もが身に着いた習性故に直立姿勢を取るのを視界に捉えながら、宜野座は目の前の男へと視点を定めた。

「上官には敬語を使え!返事はイエスかノー、サーを付けるのを忘れるな!!私に対する用件なら簡潔に述べろ!」


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