よろず部屋

□SOS!ヒーロー!!
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――お願いします!!誰か助けて下さい…!!

いえ、別にツッキーがスクランブル交差点のど真ん中で血を吐いて倒れた訳ではありません(え?古い上に何かと混ざってる?そうだったっけ?)。と云うか、ツッキーなら今現在、俺の後ろで安らかな寝息を立てております。

だから!だからこそ言います!

誰か、今すぐに俺を助けて下さい!!




もう一度、試しに身動いてみる。

――うん、ちょっとは動ける。…ちょっとだけなら。だからと言って、何が出来る訳でも無い。現状は変わらない。

ああ、どーしよ。

ツッキーの緩やかな吐息が俺の後ろ首筋を擽る。それだけで俺の心臓、口から出そうな気がする。煩い。俺の心臓、滅茶苦茶煩い。何か身体中に鳴り響いているような気がする。こんだけばっくんばっくん言ってたら、俺の後ろにぴったりくっ付いて眠っているツッキー起こしちゃうんじゃなかろうか。嫌だ。駄目。ソレ、絶対駄目。ツッキー起こしちゃ駄目。…あぁ、どうしよ。……誰か。

誰か本当に助けて!!(ループ)

日付はとある日曜日。時刻は午前の7時30分を少し過ぎた位。

カーテンを引いた部屋の中は少し暗いけど、それはやっぱりホンの少しで、時刻は朝だって事は判る位には明るい。

そして、カーテン向こう。窓の外。スズメがもっのスゴく鳴いています。……と云うか、スズメ鳴き過ぎ。ヂュンヂュンヂュンヂュン。チュピチュピチュピ…あ、コレ、警戒音だ……じゃなくって!だからスズメ、ちょっと静かにして!お願いだから!ツッキー起きちゃったらどうするんだよ!!

繰り返します。本日の日付は日曜日。体育館の定期的保守点検とやらで部活動は終日休み、と云う、何かのご都合的な休日。――その前日…つまりは昨日、もっと限定するなら昨夜――俺、山口忠は、ツッキーこと月島蛍…君(言い慣れないぃっ)と、その、えっと、あの、…い…一線を、その、……越えてしまいました………。

いや、越えてしまいました、なんて言い方は弾みでヤっちゃっいましたみたいだよな。

違います。ちゃんと…ちゃんと!俺とツッキーは、こ…こい…こい…、こっこっこっ、こっ恋人…っ同士…!です…っ!!…い、言えた…っ!…良かった…、俺、コレ、中々言えなくて、最近、ツッキーの機嫌損ねがちだったんだよね…。いや、閑話休題。

それは月曜日の事。

ちょっとしたきっかけが、一生懸命封じて来た俺の恋心の鍵を緩めさせて、つい飛び出てしまった言葉はツッキーに溜め息を吐かせた。早く、早く取り消さなきゃ、無かった事にしないとツッキーに嫌われる…!!その思いで震える唇を慌てて開こうとした時、眉をしかめたツッキーは言ったのだった。

「――ちょっと。こっちが何か言う前に勝手に無かった事にしようとしてない?」

「え…?や、あの、ゴメ」

「だから!何で謝ろうとする訳?」

ツッキーの鋭い声と怒った顔に、もう駄目なんだ、と血がざぁっと引いて行くのを感じた。駄目なんだ。一度出てしまった言葉は無かった事に出来ない。ツッキーは俺の事、嫌いになってしまったんだ。

じわりと視界が滲んだ。駄目だ。泣くな。泣いたら余計に嫌われる。鬱陶しいと思われる。

それが怖くて、ごしりと袖で目許を拭った俺の頭にぽんっと乗せられたものがあった。

「………?」

それはツッキーの右の掌。大きくて、でもちょっと薄いそれ。

「……ツッ、キー…?」

ぱちりと一度瞬いたら水滴が一つ、零れ落ちてしまった。

その雫を、左手の親指で器用に拭ったツッキーは少しだけ笑った。影山や日向に向ける軽い冷笑じゃない、綺麗な微笑み。

「やっと言ったね、山口」

「……え、」

え。

「僕も同じ」

ツッキー?

「……ちょっと?聞いてる?」

言われて、反射のように頷いた。本当はちゃんと聞けてない。と云うか、判らない。ツッキーが何を言ってるか判らない。

そんな俺の様子に、小さく息を吐いたツッキーは不意に顔を近付けて来た。ああ、睫毛長い。肌すべすべだ。本当、ツッキーって綺麗。なんて、殆ど条件反射のようにツッキーに見惚れていた俺の唇に、何か柔らかいものが触れた。

……………え?

真っ白。

ツッキーの肌。

いや違う。俺の頭ん中。

俺の唇に触ったその温かくて柔らかいものは、ちゅ、って軽く吸って、そして離れた。

離れても、ツッキーの顔は遠くはならず、両手で俺の両頬を包むように固定させて、極至近距離から見詰められた。

白いツッキーの頬がほんのりと赤い。眼鏡レンズ越し、朱で彩られたツッキーの目許は、何か、凄く色っぽかった。


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