よろず部屋

□neverending
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機体――士魂号のコックピットから引きずり出したツッキーは、綺麗で穏やかで、まるで眠っているようだった。

機能の全てが停止して猶、機体は…人型戦車はツッキーを守ってくれてたのだろう。

ツッキーを降ろしてる最中、その意識に触れた。『ごめんなさいごめんなさい』と何度も泣き謝るのが、完全に沈黙した筈の機体から伝わって来た。

『ごめんなさい。守りたかった。ごめんなさい。守れなくてごめんなさい。ごめんなさい』

何度も何度も泣いて謝ったその意思はやがて、青い光になって夜空へと昇って行った。

その燐光を見送って、やっぱりツッキーは人型戦車に好かれてるなぁ、って今更ながら思う。

ずっと。そう、ずっと、ツッキーは人型戦車に好かれていた。それは、主に射撃支援担当で機体を余り壊さない所為もあったのだろうけれど、きっと、それだけじゃなく。

皮肉屋で覇気に欠けてて、他人には何処か喰ったような態度で接して。けれど。

けれど、左手首の多目的結晶を介して行う機体との神経接続は、言葉を必要としない。

だから、ツッキーは人型戦車に好かれた。

誰よりも綺麗な、その魂が。

好かれた。だから俺は、ツッキーに付いて回った。綺麗な魂の近くで、その心に触れられたら、要らない物ばかりを詰め込まれた自分が少しでもマシになるような気がして。

――けれど。

「……ごめん、なんて…」

青い光が消えて行った夜空を見上げる。

無数の星が振って来そうな勢いで瞬いている。電力は生きている。でも、住民の避難が完了したこの場所は、当たり前だけど極端に光源が少ない。だから星が良く見える。

そして黒い月に喰われた、白い月も。

良く、見える。

青の光は白い月の元へ行けただろうか。だったら良いのにって思う。

――ごめんなさい、なんて。

謝るのは俺の方だ。

守りたかった。皆を仲間を。だから、ツッキーの反対を押し切って迄、士翼号に乗ったのに。

――けれど、結局、俺は、何にも出来なかった。

一番守りたい人を、守る事すら。

そんな事すら出来なかった。

守れなかったのは俺も一緒なんだ。

音が聞こえる。

美しくて歪んだ、哀しい鈴の音。

“――それは、幼い頃に聞いた、誰もが笑う御伽噺”

ああ。

「…そう、だね…日向……」

『めでたしめでたし』が良い。

だから。

「…ね、ツッキー」

俺の太腿の上の、綺麗な顔にそっと指を添える。ウォードレスを着けたその指はとても無骨で。ツッキーを汚してしまいそうな気がして、一度手は止まるけれど。それでも、自分の中の、後押しする気持ちに促されるように、静かにその白い頬を辿る。ドレス越しは、その体温を伝えない。その冷たささえも。

ねぇ、ツッキー。

「…行こうよ、一緒に。……日向や影山……皆がきっと待ってる…」

だから。

一緒に。

ツッキーの頬から離した手を伸ばす。

その指先から青の光が立ち上る。気が付けば、俺達の身体を無数の燐光が取り囲んでいた。

行こうよ、ツッキー。

鈴の音がただ一つ、まるで涙のように落ちて行った。






















『――例えばさ、俺達が別の俺達になったとしても、そこにも哀しい事や辛い事はきっと沢山あって、俺達はやっぱり泣いたり怒ったり悩んだりするんだと思う。ねえ、日向?それでも。それでもさ』

「――それでも、だろ?山口?」


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