Blackish Dance

□#0002
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 秀(ヒデ)がゆっくりと目を開けると、木目の天井が目に入ってきた。
「ここは…」
 顔を左に向ける。
 どうやら畳の上の布団に寝かされているらしい。障子と縁側の向こうには、花の咲く庭があった。見慣れない景色だ。
 起き上がろうとすると、和服の男の人が入ってきた。長髪で眼鏡を掛けている。初めて見る顔だ。
「大丈夫ですか?」
 話し方からわかる。優しそうな人。
「あ、はい。あの……ここは?」
「堅洲村です」
「カタス村、ですか」
「はい。西都(セイト)から少し離れた所に有ります」
「えっと、何で僕はこんな所に……」
「僕らが連れて来たからだよぉ」
 男の人が答えるより先に、庭から答えが返ってきた。
 声の方向を見ると、いつの間にか少年が縁側に座っていた。公園で出会った少年だ。
 光の下で見ると、秀より明らかに二、三歳年下だった。
「君は……昨日の……」
「昨日じゃなくて二日前だよ」
 少年が笑いながら訂正した。
「そんなに……」
 秀は布団を見つめる。
――今迄のは、夢?
「あ、そうそう。背中大丈夫?」
 少年が心配そうに首を傾げた。
 そういえば、背中に痛みが走った所から記憶がない。
「あれジュダイがやったんだけど絶対失敗だよねぇ? 痛かったでしょ?」
 表情の豊かな少年だ。笑ったかと思えば心配そうな顔に、くるくると表情が変わる。
「うん。ちょっとだけ」
「やっぱりぃ! ほらジュダイー! 僕のいった通りじゃんかぁ」
 少年は外に向かって話し掛ける。“ジュダイ”と言うのは名前なのだろうか。
「ほらぁ、謝んなってぇ! 早く!」
 少年に促されて、渋々と障子の影から出て来たのは、秀と同い年ぐらいの少年だった。
 どうやら彼がジュダイらしい。
「悪かったな」
 人に気を失わせる程衝撃を与えたにしては、素っ気無い謝罪だ。
「ほら謝ったぞ。これで気がすんだか? リヤ」
「う〜ん、まぁいいや」
 少年はリヤという名前なのか、と今更思った。
 さっきの“ジュダイ”もだが、どうも名前とは認識しがたい。
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