Blackish Dance

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 シドが置きっ放しにしていった、魚の入っていない魚籠(びく)をミヤに返した後、秀はリヤの宿(いえ)へ来ていた。リヤはリヅヒと言う人と住んで居るらしい。
 リヤの宿で秀は色々な事を教えられた。
 この村の事、住人の事、そして秀が仲間にふさわしいと言った理由。

 “堅洲(カタス)村”ここは“葦原中ツ帝国既死軍(アシハラ ノ ナカ ツ テイコク キシグン)”の拠点。
 “葦原中ツ帝国”と言うのは、この国の正式名称だ。普段は「帝国」と短縮される。
 既死軍と言うのは“裏の”帝国軍らしい。帝国軍は“治安維持部隊”と“対国外衛部隊”、俗に言う警察と自衛隊が一つになったものだ。
 そして、この村に住むのは、全員既死軍の一員。皆男だと言っていたが「そりゃ女の子居た方が良いに決まってるじゃん。でもねぇ……」と苦笑いで付け足した。

 そこまで説明した所で、リヅヒが部屋に入って来た。
「時間だぞ」
「うわ! もうそんな時間? ごめん秀、僕行かなきゃ!」
 リヤが勢いよく立ち上がり、にっこり笑った。
「まだ説明しきれてないんだけどね。後はアレンさんに任すよ」
 それ、は秀が村で初めて会った人の名前だった。
「あ、まだ1人じゃ宿まで帰れないよね?」
「だと思ってアレン呼んどいたぞ」
 そう言うリヅヒの後ろには、アレンが立っていた。
「さぁ、帰りましょうか秀君」
 相変わらずの優しい声。会ってまだ数時間しか経ってないのに、何故か安心する。
「ごめんね! また今度!」
 そう言い残すと、リヤは慌ただしく部屋を出ていった。
 その少し後、誰かがコケる音がきこえた。きっとリヤなんだろう。
 アレンと秀は目を合わせ笑った。
 帰り道、何人かの少年とすれ違った。その中にはシドも居た。
 彼らは皆同じ服を着ている。あの日のリヤと同じ、真っ白な服。コートに詰め襟を付け足した様な上着にズボン。全ての裾には青いラインが一本入っている。
 既死軍の制服、なのだろうか。
「今から夫々に任された任務に行くんですよ」
 走り去る少年たちを不思議そうに見ていた秀に、アレンが教えてくれた。
「任務って何なんですか?」
 既死軍は裏の帝国軍。裏って一体何なんだろう?
「色々、です。今日は荒れそうですね……」
「え?」
「早く帰ってリヤ君の続きを話しましょうか」
 深くには触れず、アレンはふいと向きを変えた。
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