Blackish Dance

□#0005
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「アレンさーん?」
 今朝はアレンの姿が見当たらない。家中捜したが何処にもいなかった。
「仕事、とか?」
 アレンは宿家親(おや)になった者に外での仕事は無いと言っていた。なので仕事の線は薄そうだ。
 そんな事を考えていると、アレンが帰ってきた。
「あぁ、起きてたんですね、すいません。今から用意します」
 いつもより黒っぽい和服からは、少し焼け焦げた様な匂いがした。

 昼頃、ヒデが縁側で弓の手入れをしていると、アレンがやってきた。
「頼まれていたものです」と、一枚の紙を差し出した。
 何の事か忘れていたヒデは、紙を見て思い出した。
「みんなの名前だ! 覚えててくれたんですか? 有難うございます!」
「いいんですよ。名前の他に、武器と、その名前も書いておきました。あまり役に立つとは思えませんが」
と、アレンは苦笑した。
「流石に顔は見て覚えて下さい」
「はい!」
 ヒデはざっと目を通す。まだ聞いた事のない名前がいくつかあったが、何度か見るうちに一つ気が付いた。
「あの、アレンさん。リヤの名前抜けてますよ?」
 確かに、宿家親であるリヅヒの名前はあるのに、リヤの名前は何処にも書かれていない。リヤの名前が書かれるであろう場所は、空白になっていた。
 アレンは何も言わずに目をそらした。
「忘れてたんですか?」
「ヒデ君、リヤ君は、昨日、死にました」
「え……? 死ん、だ? リヤが? 嘘だ……」
「今朝、遺体を火葬してきました」
 あの匂いは、リヤを焼いた匂い?
 「また今度」と、手を振った、あれが最後に見たリヤの姿。
「どうして……」
 涙が溢れた。
「よく聞いてください。既死軍の今一番の敵は蜉蒼(フソウ)です」
「蜉蒼……? 知ってる。聞いた事、ある」
「リヤ君は、蜉蒼のテロに巻き込まれたんです。リヤ君だけじゃありません。民間人も沢山亡くなりました」
「何でそんな事を……」
「表向き、蜉蒼は無差別テロを起こす組織となっていますが、本当の標的は、私たち既死軍なんです」
 始めて出会ったのがリヤじゃなかったらきっと自分はここにいない。許せる訳がなかった。
「許さない……。僕は、蜉蒼を許さない」
 今までも何度かニュースで“蜉蒼”というグループの話題は聞いていた。
 しかし、まさかそれで知り合いが死ぬとは思ってもみなかった。
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