Blackish Dance

□#0007
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「ただいま戻りました」
 ヒデが宿(いえ)の引き戸を開けると、アレンではなく知らない人が居た。
「丁度良い所に!」
「え?」
「あぁ、俺はジン。よろしくな」
 確か、憑師(ヒョウシ)と言うのを担当している人だ。
「何かご用ですか?」
「いや、お前に用があったんだけどさ。お前もアレンも居ないから帰ろうと思ってた所なんだ」
「アレンさん居ないんですか?」
「あぁ。多分リヅヒの所だと思うけどな。行くか?」
 ヒデは頷く。アレンが居ないと心配だった。
「そう言えばジンさんって憑師なんですよね? 何なんですか? 憑師って」
 リヅヒの宿へ行く道中、無言で歩き続けるのもどうかと思ったヒデは尋ねる。意味も分かるし一石二鳥だ。
「武器に力をつけるのが仕事だ」
「力、ですか」
「力っても攻撃力とか防御力とか言うのじゃなくて、武器と所有者を結び付ける力ってやつ」
「どう言う意味ですか?」
「俺たちの武器は、ただ闇雲に使えば良いってもんじゃない。武器と所有者が同じ力じゃないと上手く使えないんだ。だから武器の力が大きすぎても、所有者の力が大きすぎてもダメなんだよ」
「……いまいちよく分かんないです」
「“百聞は一見に如かず”ってな。明日見せてやるよ」
 見ても分かるとは思えなかった。それに“力”がどうやって見えるか分からなかった。
「おっ、アレンだ」
「こんばんは。どうしました?」
「アレンを捜してたんだ。今帰りか?」
「はい、すいません。リヅヒと暇な者同士、囲碁をしていました。何かご用でしたか?」
「いや、ヒデがあんたを捜すっていうから連れて来たんだ」
「そうですか。有難うございます」
「じゃあ俺の宿向こうだから。また明日な、ヒデ」
「はい、さようなら」
「おやすみなさい」

 ジンと別れて歩き出す。
「明日は何かジン君と約束でもあるんですか?」
「憑師の仕事は百聞は一見に如かずだからって、明日見せてくれるんです」
「そうですか。こちらからお願いする手間が省けました。ジン君の話をよく聞くんですよ」
「そんなに重要なんですか? 憑師って」
「私たちの仕事に欠かせませんからね」
「どう言う事……」
「百聞は一見に如かずですよ」
 アレンはにっこり笑った。
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