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□思案
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「むぅ…」


その日、チルノは湖の畔に座り空を仰ぎながら難しい顔をしていた。
原因は、数日前のレミリア・スカーレットとの邂逅。
チルノは今まで自分が最強だと信じて疑っていなかった。
だが、彼女と出逢い、思い知らされた。
かなわない、と。
それはとても屈辱的な事だったが、今のチルノにとって、そんな事はどうでもよかった。

確かに自分の命が危険に晒された。だが、その後レミリアは、チルノを優しく抱き締めてくれた。
レミリアにどんな意図があったのか、それはチルノには理解しかねた。
だが、抱き締めてくれた時の優しい感触は、覚えていた。
そして、レミリアの甘い、匂い。
頭の奥が痺れるような、女性独特の香り。


「なんか変態みたいじゃん…」


小さく呟いて、溜息を吐く。
でも、一番印象に残っていたもの、それは抱き締めてくれていたレミリアの優しい微笑みだった。
確かに自分を見て、微笑んでくれた。
その微笑みがチルノの頭から離れなかった。


「むぅ〜…」


わからない。レミリアが何を考えていたのか。
単なる気紛れだったのか、それとも何か意味があったのか。
チルノは難しい事を考えるは苦手だった。
考えるよりも行動している方がよっぽど楽だし、何より自分らしいと思っている。
だけど、今回はそうはいかなかった。
別に、考えたくて考えているのではない。
何かしようとしても思い出してしまうのだ。レミリアの事を。
彼女と逢ってから、彼女の事しか考えていない。
彼女の事しか考えられない。
それがどういう意味を持っているのか、わからない。
わからないから、苛立つ。


「う〜…」


今日何度目かの呻きを漏らしながら横になる。
答えが欲しい。
今の自分を救ってくれる答えが。
この胸の苦しさを払ってくれる答えが。


「……決めたっ」


レミリアに会いに行こう。
彼女なら、答えを出してくれるかもしれない。
チルノはそう考えた。
それに、チルノ自身彼女に会いたかった。


「確か紅魔館って所だったよね」


起き上がりフワリと宙に浮きあがる。
やはり、考えてるよりも行動する方がよほどいい。
小さく笑いながら、チルノはそう思った。


「さてと!目指すは紅魔館!」


そう叫んで、チルノは風を切った。













-続く-
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