本棚


□邂逅
1ページ/3ページ

美鈴と一緒に待ってしばらくが経った。

使いに出したメイド妖精は帰ってくる気配がない。


「うーん…またどこかに行っちゃったのかな」


困り顔で美鈴が呟く。チルノはそんな美鈴を見ながら不安だけが募っていく。


(レミリア…会いたいのに…あたいの事嫌いになっちゃったのかな…)


あんなに優しく頭を撫でてくれたのに。

俯きながら泣きそうになるのを必死に堪える。
そんな様子を見て美鈴は慌ててチルノの前にしゃがみこんで笑顔を浮かべる。


「最初から私が行けばよかったわね。ごめんなさい、すぐに行ってくるからちょっと待っててね?」


「その必要はないわ」


突然の声に美鈴が顔を向けると、つまらなそうな顔をした銀髪のメイドが立っていた。


「咲夜さん…」


「ご苦労様美鈴、貴女は門番の仕事に戻りなさい」


「……はい」


美鈴は少し心配そうにチルノを見てから、戻っていった。


「チルノ」


咲夜に呼ばれてチルノは顔を向ける。

いつかに見たことのある顔だった。あの、花の咲き誇る異変の時に見かけた気がするが今は何か言う気も起きない。


「レミリアお嬢様が呼んでいるわ、ついてらっしゃい」


「……!」


レミリアという単語にチルノの胸が高鳴る。

(やっと…やっとレミリアに会える…!)

少し興奮した様子のチルノを見て僅かに口角を上げてから、咲夜は背を向けて歩きだした。

その背中に着いていきながら、チルノの胸の内は嬉しさでいっぱいになっていった。












館の中は驚く程に広く薄暗かった。

館を包む雰囲気でさえも、他の場所とは違いどこか暗く、重苦しい。


「ここで、お嬢様が待ってるわ」


ある一つのドアの前で立ち止まって、咲夜が告げる。


「それじゃあね、可愛い氷精さん」


それだけ言って、次の瞬間には咲夜の姿は消えていた。
チルノは驚きながら辺りを見回すが、物音一つしない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ