本棚


□邂逅
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何か能力を使ったのだろうか。だが、今はそれを気にしている余裕はチルノにはなかった。

(この中にレミリアがいる…)

早鐘のように胸が高鳴る。
チルノは深呼吸をしながら意を決してドアをノックする。


『開いてるわ。入りなさい』


ドアの中からレミリアの澄んだ声が響いてきて、チルノはゆっくりとドアを開けた。

部屋の中はカーテンで締め切っている為か昼間であるにも関わらず薄暗い。

部屋の中央に置いてあるテーブルには火の灯された燭台があり、その向こう側に、微笑みを浮かべたレミリアがチルノを見ていた。

その姿を見て、チルノは堪らず走り出した。


「……レミリア!」


レミリアは微笑みを浮かべたまま何も言わず立ち上がると、テーブルの前に移動して少し、腕を広げた。
チルノはそのままの勢いでレミリアに抱き着く。
そんなチルノを優しく抱き締めながらレミリアは目を閉じる。


「やっと会えたぁ…」


レミリアの腕の中で泣きそうになりながらチルノは笑顔で彼女を見上げた。


「いらっしゃい、よく来てくれたわね」


優しく自分の背中を撫でながら微笑むレミリアを見て、チルノの頬が熱くなる。


「レミリア…」


「ちょっと待ってね」


そう言って、レミリアが抱き締める腕の力を少しだけ強める。


「少しだけ…このままでいさせて?」


本当は、今すぐ話したい事があったがレミリアの幸せそうな微笑みにチルノは目を閉じてただ小さく頷いた。

自分の胸の中が、暖かい幸せな気持ちでいっぱいになっていく。

さっきまでの不安は、もうどこかに消えてしまった。
あの時に感じたレミリアの温もり、それが今また、自分の腕の中にある。
それだけでチルノは紅魔館に来て良かった、そう思えた。


「……」


レミリアの胸の中で、チルノはこのまま時間が止まってしまえばいい、そう、思った。

















-続く-
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