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□二人
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その顔を見てるだけで、自分も心が安らいでいくようだった。
「それに…あたい、レミリアに聞きたい事があったから…」
呟くように言ってから、チルノは下を向いてしまった。
先程までの元気な様子は無く、ただ私の腕の中で何処か言いづらそうにしている。
「聞きたい事?私で答えられる事なら何でも答えるわ…?」
優しく、子供をあやすように呟いて、頬を撫でる。
氷精、と言うだけあってその身体は少し冷たいが、別に気になる程ではない。
それよりも、私にとって今大切な事はチルノの中の不安を取り除いてあげることだった。
「あたい…変なの」
「変?」
「うん…」
小さく頷きながら、チルノが私の腕の中から離れ、立ち上がる。
私としてはもっと彼女の感触を楽しみたかったのだが、話の腰を折るのは可哀想だ。
「初めて…レミリアに会った後からずっと、あたい…変なの」
そんな言葉を聞いて、私は思わず椅子から立ち上がるところだった。
私がチルノを日が経つにつれ愛しいと思うようになったと同じように、彼女も私を…。
そうならば私はどんなに幸せだろうか。
しかし、今はまだ分からない。取り敢えず今は感情を表に出さず、『紅魔館の主』として彼女と接しよう、そう思った。
「最初は、レミリアに仕返ししてやろうって思ってた。でも…でもね…いつの間にか、別の、何かに変わってたの」
「何か?」
「うん。レミリアに触れられた事やレミリアの微笑んだ顔を思い出す度に、胸が…凄く苦しくなるの」
あぁ、もう…。
私はなるべくゆっくりと立ち上がりチルノを見る。彼女は辛そうな顔で胸を抑えながら、私を真っ直ぐに見つめていた。
「でもね、今日レミリアと会った時、胸の苦しさが無くなって、よく分からないけど…暖かい気持ちになって…」
もう、駄目だ。
「それで……」
チルノはその後の台詞を言うことが出来なかった。
何故なら、私が彼女の腕を掴んで引き寄せてしまったから。
チルノは油断していたのか特に抵抗する事も無く、私の胸元に収まり、そんな彼女を強く抱き締める。