本棚
□想い
1ページ/5ページ
全く訳がわからなかった。
あたいはただありのままをレミリアに伝えただけだった。
けど今、レミリアはあたいを抱き締めて、少し困ったような笑顔をあたいに向けていた。
「先に謝っておくわね。ごめんなさい」
そして、それだけ告げるとレミリアの顔が近くなって、あたいの唇に、何か柔らかいものが触れた感触がした。
それがレミリアの唇だと理解するには、しばらくの時間が必要だった。
あたい…今女の子同士なのにキスをしてる…。
でも、不思議と嫌じゃない。それどころか、もっと、もっとこんな時間が続けばいい。そんな風に感じてしまって。
甘い、レミリアの香りがして、頭の奥が痺れたみたいになって…何も考えられなくなる。
胸がドキドキして、今にも破裂してしまいそうな、そんな錯覚に陥りながら、あたいはゆっくりと目を閉じる。
レミリアを、身体の全部で感じたい…。
長い、長い口付け。
それこそ、時が止まってしまったんじゃないかと思うくらいだった。
「ん…」
ようやくお互いの唇が離れて、あたいは目を開ける。
やだ…もっと…したい…。
少しだけ泣きそうになりながら痺れた頭でそんな事を考えていると、レミリアはキスの名残なのか頬を紅く染めながら優しい笑みを浮かべていた。
「チルノ…貴女のその気持ちに…答えをあげるわ」
そう耳元で呟いて、あたいを抱き締める腕に僅かに力を込めた。
「貴女も私と同じなのよ」
「おな…じ…?」
「そう…」
そう言って、レミリアは優しく頭を撫でてくれた。
あたいはそれを心地好く思いながら言葉の続きを待った。
もしかしたら、その答えを聞いたら後には戻れないかもしれない。そんな考えがよぎったけれど、ここまで来たのだ、今更引き返す道などありはしない。