精神公演義
□第2話
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特製目覚まし時計のアラーム音は、想像以上にデカかった。
[ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリイリイッリイ!!]
デリオ「うるさい!!」
寝起きの悪そうな顔をした精霊・デリオは、時計の音を乱暴に止めた。
デリオ「う〜〜〜…。」
目をこすりつつ時計のカレンダーに目をやると、そこに書かれていたのは、常人なら夢かと思い二度寝し出す日付である。
[2402年11月15日]
デリオ「…!…マジで250年経ってる…!!」
今が25世紀であるという驚愕の事実に眠気も吹っ飛んだ。寝ぼけ眼をカッと見開き、体を起こすデリオ。そしてまずは何より、最優先で確認したいものがあった。
[ポウっ]
光は凝縮し、精神公の任命状が現れた。
デリオ「ほっ。これが無いと、寝た意味ないもんね。…人が入った形跡もないし。」
デリオは小太陽の中を見渡す。中はドーム状で、底面だけは平らになっている。他者が侵入した形跡は確かに無い。元々入れない仕様になってはいるが、それでも辣腕の能力者ならそれを破って侵入してくるという可能性もわずかながらある。とは言えデリオが見る限り、他者が侵入した形跡は確かに無い。
デリオ「しっかしうるさい時計だったな〜…。そこまで寝坊助さんだと思われてたのかな、わたし…。失敬な。」
立ち上がって伸びをし、布団を畳む。
デリオ(もう…貴家公も生きてはいないか。子孫が残ってるわけでもないし…。いや、そんな事言ってる場合じゃないや。わたしには、大っ事な使命があるんだから!)
[キリっ!]
とした表情で、再び任命状を手に取る。
[ポウっ]
これだけは絶対に紛失してはいけない。高級紙は手の平サイズの光に戻り、デリオの手の中に消えていった。
デリオ(さて、これからどうするか…。まァ、構想通りに動こうか。)
眠る前に考えておいた行動方針に従い、選定作業を行うことを確認した。
デリオ(まずは、ここを出よう。人に見つかると厄介だから、姿を消して、と。)
精神体だけあり、姿を消すのはお手の物。これで一般人には見つかることはない。
デリオは宙に浮き、浮遊しながら小太陽の外へと出た。天候は良好、秋晴れの爽やかな気候である。
オバハン達「がやがや!がやがや!」
外には、思った以上に人がいた。一瞬デリオはギクリとしたが、どういう事なのか理解するのにさほど時間はかからなかった。
デリオ(びっくりした。何かと思ったら…観光地化、ね…。)
そう、この時代では小太陽は史跡として、観光資源として利用されているのだ。帝国黎明期を象徴する建造物であるため、周囲には見物客であろう人々が散在している。
デリオ(結構立派な感じにしてもらってるね。嬉しい事だ。…折角だし、少し周りを見て回ろうか。)
すいすいすーいと空中浮遊で辺りを散策する精霊娘。精神体というのはなかなか便利なものである。
茶屋・売店や観光案内所。小さな博物館のような施設もあった。遠くには駐車場も見える。
『神君貴家公ゆかりの小太陽にようこそ!』
入り口付近の文字を見て、デリオは心を和ませる。
デリオ(この時代も平和そうで、何より。)
現代の天遁帝国も、心豊かな生活を送れているようだ。貴家幸太の悲願でもあったこの光景に、デリオはに何とも言えない喜びを感じた。