精神公演義

□第4話
1ページ/9ページ

五刀斎は履き物を脱ぎ、2本の刀を両足の親指と人差し指の間にそれぞれ挟んだ。峰が膝の方を向くように刀を立たせている。

五刀斎「五刀流…即ち、刀5本は全て一度に持って振るう剣技なり。」

スギヤ「ゴクッ…!」

ミズナ「ゴクッ…!」

アツシ「ゴクッ…!」

コウジ「ゴグッ…ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ…!!」

飲み込んだ唾に蒸せるコウジ。五刀斎は空いた両の手で刀をもう2本抜いた。

五刀斎「ご覧、これにて四刀流。さて、最後の1本だ。」

両手両足に1本ずつの刀。既に一振りの刀を携えた手で、最後の1本を器用に抜く。

デリオ(残り1本…何処で持つ気?!)

少し自慢げにほくそ笑みながら、ゆっくりと刀を体の前の方へとやる。

五刀斎「お待ちかね。最後のは…ここさ。」





ミズナ「…。」

デリオ「うん…。」

スギヤ「カッキー!」

コウジ「あ〜あ〜…。」

アツシ「やっちまったな…。」

麺師王(何と…!)

場の空気は、見る見るうちに冷め切っていく。何故か目を輝かせるスギヤを除き、五刀斎を見る皆が白けてしまった。

五刀斎「括目せよ!!これぞ後藤五刀流の究極装備!」

ただ1人、当人後藤五刀斎だけは、むしろテンションを上げて究極装備とやらを見せつける。

[きらりらりーん]

五本目の刀の柄は、五刀斎の太股と太股の間、即ち股間に奥深く挟み込まれていた。

五刀斎「言葉も出ないようだな。が、致し方あるまい。何せこの後藤五刀流は、そのあまりの隙の無さに、初見の者は全て例外なくたじろいでしまうからなァ。」

刀がずり落ちてしまわないよう、五刀斎は内股になって柄をしっかりと挟み、ドヤ顔をする。どこから自信が湧いてくるやら…。

五刀斎「さて、それでは覚悟を決めてもらうよ?いざ、尋常に勝負!」

五刀斎は下半身の3剣を落とさないよう、内股のままよちよち歩きで四天王に向かって来た。

[せかせかせかせか!]

これでも足は忙しく動かしてはいるのだろうが、何分歩幅が五本目の刀のせいで相当制限されているため、泣けてくるほど鈍間である。つい今し方“逃げ足”使用中の四天王を逃さず追って来た、あの健脚は見る影も無かった。

四天王とデリオは彼の情けなさに無言で冷や汗を垂らしつつも、一応凶器を持って(挟んで)いる剣士を店に入れないよう、店の前の通りに出た。小走り程度の移動速度ではあったが、これでも内股の後藤よりかは速い。

五刀斎「ほう、間合いを取ったかね。ま、正解だ。この刀、切れ味は鋭いからな。それにしても、さっきといい今といい、逃げ足の速い子等じゃあないか。」

ミズナ「う、うーん…。そうかなー…?」

ただ呆れるしかない四天王らであった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ