精神公演義
□第5話
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昼食を終えた芝政商店の面々は、店番のコウジを除き部屋で一休みしていた。
デリオ「テツキ、今日商店街の会合何だって?」
外出の理由はこれであった。店長である一郎の出席に、次期経営者としての自覚を持っているテツキが同伴したのである。
テツキ「派遣事業と非正規雇用形態について。わかんねーだろ?お前らには。」
アツシ「けっ、テメーだってわかってねーくせしてよ。」
スギヤ「デキる子ぶるのはよしなよ、アホの霧崎さん。」
テツキ「うるせェ!おれは!エリートなんだよ!」
ミズナ「自称ね。そして願望ね。」
皆が楽しそうに談笑している中、1人店番を任されたコウジは渋々レジを打っていた。
コウジ「チキショー、何でおれだけ…。」
芝政商店は適当な人事を行っているため、アルバイトのシフトは明確に定まっていない。兎に角その時にいる人間にスタッフとして働かせている。コウジは四天王随一の雑魚キャラであるため、四天王の中で1人パシリを定めるとしたら彼になる場合が多い。今回もアツシ達にこの役目を押し付けられた。
格好付「そこの貴様。少々尋ねたいことがあるのだが。」
コウジはお客の来店に、手もみをしながら愛想よく出迎える。皮肉なことに、四天王で一番店番に向いているのは彼かもしれない。他にロクなのがいないだけかもしれないが。
コウジ「へいへい、いらっしゃいお客さん。何に致しましょ?」
格好付「デリの霧崎という男を…知っておろうな?」
コウジ「…!?」
霧崎とは、言うまでもなくテツキの名字である。
コウジ(何だ?コイツ、カッコつけた登場しやがって…。)
コウジの感想も正論である。この男は腕を組みながら入り口付近の壁に寄りかかり片足を品物棚に乗せるという、実にふてぶてしいというか、格好をつけたポーズでコウジに声をかけたのである。しかも声色もわざわざいい声を発するなど、やたらに凝った演出を自らしている。もうニヒルな風格を出そうというこだわりが鬱陶しいくらい伝わってくる、正真正銘のキザ男である。ここまでくると逆に気持ち悪いくらいのニヒリストだ。
格好付「私か?私の名は熊坂。熊坂光だ。」
コウジ「いや聞いてねぇし!どこの世界に土産買いにわざわざ店員に自己紹介する客がいんだよ?いい加減地声で話せば!?」
この熊坂という男、歳は見た目テツキや四天王と同じくらいか。しかし、コウジとは初対面である。学生時代の知り合いなどではない。
格好付改め熊坂「もう1度聞くが、デリの総長・霧崎テツキという男を知っているな?」
コウジ(…?霧くんなんて、そんなに知れた名じゃないはずだけどな…?それ以前に、今までデリに用のある奴なんていなかったし…。)
熊坂「図星のようだな!奴は今何処にいる?」
四天王中最弱のコウジとはいえ、彼にもこの男は敵であるということを何となく感じ取れた。
コウジ「…うちの総長に何の用だ!?」
意を決し、彼が敵であるとみなした。コウジはこの熊坂という男に警戒心を露にする。