精神公演義
□第6話
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11月17日。熊坂戦で負ったケガもあるため、テツキは今日一日はじっとしているようにした。手負いでは店員の仕事は務まらんとの芝政一郎の弁にしゃーなしで従ったのだ。
テツキ「けっ、別におれは普段通り動けるっつの。一郎の野郎、偉そうにしやがって…いや!!一番えらそーなのはアイツだよアイツ!!」
スギヤ「コウジ?」
テツキ「そう、コウジ!…じゃねーよ!!熊坂だ熊坂!!!」
コウジ「何で今おれの名前出した?!とばっちりじゃねーか!」
この日も皆揃って土産物屋にいた。テツキは一応静養中であるが、元気いっぱいの様子である。
テツキ「熊坂ってあれ何なん!?マジ?何なん!?おい!何なん!?調子ぶっこき過ぎじゃね!?やめて、ホント!!ウザすぎる!存在が!」
デリオ「知らないよ!落ち着いて!」
熊坂戦での敗戦がよほど御悔しかったと見える。もう大荒れである。
アツシ「リベンジしなきゃなー。このあっつぁんがやられたまま黙ってられるかってんだ!」
スギヤ「え?アッつぁん何もしてなかったよ?!見てただけじゃん!」
テツキ「よく言ったアツシ!!全くその通りだ!探し出してメッチャクチャのギッタギタのけちょんけちょんのコテンパンにしてやろーぜ!?」
敵愾心を露にするテツキの怒りを宥めたのは、意外なことにデリオの提案であった。
デリオ「じゃあさ…わたしが探して来ようか?」
テツキ「!?お前がか?」
デリオ「うん。いいかな?わたしも興味あるし。」
テツキ「…そうか。お前にもやるべき事はあるんだろうしな。ほんじゃ、いっぺんお願いしてみるとするかね。」
提案に最初は驚いたテツキであったが、彼女の秘めたる事情にも配慮し、快く許可した。
デリオ「決まりだね。じゃあ、四天王を連れて行くよ?」
コウジ「おれ達も?!いいよおれは留守番してっから!!」
熊坂の強さに真っ先に怯えるコウジであった。だが、仲間達は勇敢である。
スギヤ「何ビビってんだい!コウジくんもいらっしゃい!」
ミズナ「霧くん留守番よろしくねー。」
スギヤがコウジを引きずり、デリオを先頭に5人は店を出た。
一郎「お出かけかいデリオちゃん。」
レジスタッフの一郎が声をかける。
アツシ「おおよ。一郎、車借りるぜ。」
一郎「無茶するなよ?」
アツシ「俺はヘマなんざしねェ。」
そう言ってアツシは5人の先頭に立ち、店の裏の納屋へと先導する。納屋の中には、貧乏くさい2人乗りの白の軽トラが1台止まっていた。
デリオ「トラック?」
ミズナ「あたし荷台がいいー!」
スギヤ「軽トラの荷台こそ少年達の夢ー。つか人数的にそこしか乗る場所ないんだけどね。」
コウジ「アッつぁん毎度!無免許運転オナシャス!」
アツシは運転席、デリオは助手席、残り3人は荷台に乗りこんだ。シートベルトはデリオのみが締めた。
アツシ「全員乗ったな!?行くぜっ!発進!!」
[ぶるるるるるるるるるん!]
威勢のいい掛け声とは対称的に、エンジン音は予想通り地味であった。