精神公演義

□第10話
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履物を脱いで社殿に上がる。中に入っても貴家院の爺さん自らが案内をしてくれた。

ミズナ「霧くん、この爺さんデリオに思い入れでもあんの?それに“貴門”ってな〜に?」

テツキ「んなことも知らねーのかおバカちゃん!“貴門”ってのは、貴家氏門下の略だ。簡単に言うと、貴家家にゆかりのある人って意味だな。貴家家自体は断絶してるが、“貴門”は現代でも続いてるのさ。」

ミズナ「そうそう、八名氏に天遁帝王家を加えた9つの門閥のうちの1つだったっけ。忘れてたよ。この貴家院も“貴門”に属する社院の1つなんだったよね?貴門精霊のデリオとは同じ貴門どうし好があるってことか。」

アツシ「知ってんじゃねーか!何でわざわざ聞いた?!」

ミズナ「霧くんバカすぎて知らんのんちゃうかなあ〜って思ってさ。」

テツキ「テメーに世話焼かれたかと思うと屈辱だわ!誰がバカだ!見くびるな!」





貴家院社殿は内装も和風な雰囲気である。宮司の爺さんの他にも神職と思わしき身なりの人や、事務っぽい人など、社殿内で働いている人が結構いる。さすがは芝那一の宮である。

客間にて座布団にストーブが用意され、5人は貴家院の爺さんのもてなしを受けた。

テツキ「申し遅れたが、おれ達は師団“デリ”の面々だ。おれが総長の霧崎。芝那市から来た。」

今一度しっかりと挨拶をする。

デリオ「貴家院のお爺さん。わたしが精霊のデリオだって何でわかったの?」

貴家院「昔貴女達精霊6体を象った彫像を見たことがありましてな。見れば見るほどそっくりですじゃ。」

デリオ「ええ〜?わたし達の像が?何か照れるな…。そうか、そんなんあるんだ。いずれ見に行きたいな。」

貴家神君の御膝下である芝那国ならではの彫像である。ただ、デリオ自身には、自分たちをモチーフにした彫刻を作られたという記憶は無い。後世の芸術家が想像して作ったものであろう。

貴家院「ご存じありませんでしたかな?貴家公はともかく、精霊の皆さん方は写真も肖像画も残っておりませんから、その像でしか姿を拝めないんですじゃ。」

スギヤ「ん?後の時代の人が、モデルも写真も無しに作ったのか?よくそっくりに出来たもんだな。」

テツキ「しかしこれじゃあ正体隠しようないんじゃねーか?今後すぐバレちまうぞ。変装でもさせるか?」

貴家院「それでも儂が貴女を貴門精霊と確信したのは、名前を聞いてではありますがのう。」

スギヤ「単なる不注意じゃねーか!?気構えが足りねーんだよ!今度から注意すること!」

デリオ「スイマセン…。」

お前も言ってただろうが。

[ばくばく!もぐもぐ!]

熱いお茶と茶菓子に喜ぶおチビちゃん。

ミズナ「ごっくん。まっ、姿の方はそう気に掛けることもないと思うよ。貴門精霊に会ったことある奴なんて殆どいないだろうし。ましてや見かけるなんてこと思いすらしねーだろーしさ。」

アツシ「念のため偽名は必要だな。ホジにもそれでバレちまったんだろ?本名そのまま使うとかバカの所業だぜ。」

デリオ「スイマセン…。」

一行のうちデリオだけは正座している。
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