精神公演義第1巻(旧)
□第3話
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12月に入ると、もはや気候は冬そのものである。芝那は雪国であるため、冬の観光地はまさに厳冬である。芝那の2大観光地のもう片方であるここ“凱旋門”も、小太陽同様ここ数日客足が遠のく一方である。
一郎「ガミガミ、ガミガミ!」
テツキ「うっせーな、わーかったよー。謝ってんじゃねーかさっきから。」
テツキは警備員の仕事をしており、この日は凱旋門の警備についていた。以前彼のせいでひどい目にあった芝政一郎はこの職場の同僚である。この顔が変形しきったおぢさんは、まだあの日のことを根に持っていた。
一郎「お前は小太陽の前から一体全体どうやって姿を消したんだ?え?!」
テツキ「ふっふ、そいつァ言えないねぇ。内緒だ。」
デリは小太陽に内部があること、デリオという精霊がいることを秘密にすることにした。並びにデリオも今後は人前で姿を見せることにはしたが、精霊ではなくデリの一員の能力者として他に接することを決めた。戦闘やイザコザが起きても大きな干渉はせず、四天王5人目ぐらいの感覚でいることにし、あくまでテツキらのサポートに回るようだ。
一郎も漸く落ち着きを取り戻す。
一郎「しかしこの寒い中じゃ観光客も少ないなあ。」
テツキ「そだねー。」
芝那国の国都である芝那市内にある小太陽に比べ、この凱旋門は芝那国の西端の国境付近に位置し、交通の便は悪い。それ故、観光での人気は小太陽よりも劣る。2人で見張っているが、この時間帯は客足がとんと途絶えていた。
一郎「暇だなテツキ。」
テツキ「帰りてー。」
???「もし。そこの貴方。」
背後から突然聞こえて来た声に2人はびっくりしつつ振り向く。そこには長身蒼髪の美女が1人。年はテツキより上、20代前半くらいであろうか。サングラスを手に持ち、後ろにはメタルブルーのバイクを止めている。
一郎「はいはい、何でしょお客さん?」
テツキ(…妙だな。全く気配を感じ取れなかった。能力者か?)
蒼髪女「ここから小太陽へはどうやって行けば?」
一郎「ほいほい、小太陽ね。まず…」
蒼髪女「お前に訊いてはおらぬ!そっちの白髪の君に訊いておるのです。」
何故か一郎を一蹴し、テツキに道を尋ねる。
テツキ「そうさね、バイクなら…」
ふとテツキが口を止める。
テツキ(バイク…?バイクに乗って来た客におれが気付かなかっただと…!?)
蒼髪女「どうかなさいました?」
テツキ「いや、何でも…。小太陽なら国道を…」