精神公演義第1巻(旧)

□第5話
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すっかり怪我が治ったテツキは、この日は小太陽の警備に就いていた。また芝政一郎と一緒である。

テツキ「あ〜。やっぱし人いねえわ。冬休みになったらちったぁ旅行客も増えるかねェ?」

一郎「そうか、もうそんな季節か。南国でも雪山でも神社仏閣でもないからな、ここも凱旋門も。」

避寒もスキーも初詣も期待できない観光地・芝那。こりゃあ年末年始は仕事入らねーな、と思う二人であった。

テツキ「まあ休暇が出来るに越したことは無いんだけどよ。寒いし。」

一郎「…テツキよ、お前はこの年末年始は実家に帰るのか?」

テツキ「帰るも何もここが地元だよ。おれが元ホームレスチルドレンって話しなかったか?」

テツキに親は居ない。兄弟の存在も不明である。孤児で施設の出であったが、今は四天王の家に居候である。

一郎「そうか…そうだったな。」

テツキ「一郎、あんたんとこは?」

一郎「わしんとこか。そうさなー、あのどら息子は帰ってくるのかねぇ。」

テツキ「へー、息子いたんだあんた。幾つ?どこ住んでんの?」

一郎「18、いや19か。いずれにしろもうお年玉って歳でも無いな。天遁北の軍都国で軍人を目指しておる。」

テツキ「軍人ん?!あんたの息子が!?信じられねー…。」

一郎の顔とナリを見てテツキは驚く。
天遁とは天遁帝国の首都・特別行政区である。国名と首都名が同じでややこしいので、今後国名を指す際は“帝国”と称することにする。

一郎「馬鹿のくせして喧嘩だけはやたら強かったからなぁ。」

テツキ「マジで!?軍で何してんの!?」

一郎「あんま華々しいところじゃないがな。なんかお前さんみたいな術師が集まっとるところに入るそうだ。わしみたいな凡人から生まれたなんて到底思えんわな。」

テツキ「…スゲーな!そっか、あんたの息子も能力者だったんだなー。しかも軍か。いいコネ出来たぜ。」

一郎「言っとくが、お前なんか紹介せんぞ?…それに軍で術師の集まっとるとこって、名前は難しいけど」

テツキ「“術師隊”だろ?そんな難しいか?」

一郎「言い難かろうが!それより、軍内の各隊では大して権力強いとこでも無いって言うぞ?ましてや三下の若造じゃな…。」



術師隊とは天遁帝国軍内の部隊の一派で、100名超の術師が属する、言わば“最強の師団”である。
因みに帝国内各国には軍を持たない国が圧倒的多数派で、芝那国もその一つである。
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