精神公演義第1巻(旧)
□第9話
1ページ/8ページ
人気のない場所へと辿り着いたテツキとラーイー。
ゴーグル改めラーイー「ここなら…。」
テツキ「で?おれに何か用かい少年?」
ラーイーはテツキより年下に見える。
ラーイー「すまない。…あんた能力者だな?瑠璃原の小池拳悟が芝那に移ったって聞くけど、もしかしてあんたのことか?」
テツキ「いーや、違うねェ。おれは芝那の師団デリの総長・霧崎テツキ。能力者ではあるがな。話って何だ?」
ラーイー「あぁ、実は隣の志政国のことなんだが…。」
志政国は芝那国の東側の隣国で、負けず劣らず田舎である。
ラーイー「志政国の蜘蛛街道。その一帯を縄張りとする師団があるんだが、最近頭角を現してきたある能力者と小競り合いをしているんだ。“辻斬り”と名乗り、術師を片っ端から襲っていた剣士だ。」
テツキ「…知らんな。剣士の知り合いもいないしよ。」
ラーイー「仲間達の報復をと立ち上がった師団ではあったが、辻斬りの奴は仲間を呼んで対抗した。以来、2つの勢力の間で衝突が耐えない。」
テツキ「どこの国にも師団の勢力争いってのはあるもんだな。」
ラーイー「オレは武者修行中の身で志政に移ってからはその師団の世話になっていたんで、何とかして彼らの力になりたい。そこで援軍を探そうとこの隣国芝那にやってきたんだ。…あんた師団の総長だって言ってたな、どうかオレ達を助けてはくれないか?!」
テツキはすっくと立ち上がる。
テツキ「面白い!!おれ達で良けりゃいくらでも手ェ貸すぜ!?」
テツキの快諾に表情が晴れるラーイー。
ラーイー「そうか!助太刀してくれるか!?ありがとう!!」
テツキ「丁度場数を踏みたいと感じてたところだ。年末年始はどうせすることねェしな。仲間と相談してみるよ。」
ラーイー「ただ…。」
テツキ「ただ?」
ラーイーは再び表情を曇らせる。
ラーイー「ちょっと…いや大きな懸念があるんだ。早めに言っておくよ。」
テツキ「?」
ラーイー「この紛争を嗅ぎ付け、帝国軍術師隊が動き出してる。」
テツキ「術師隊…?!」
テツキにとっても最近報道でよく聞く名である。
ラーイー「北西地方を管轄する瑠璃原支部の戦力だ。流石に1軍級は動いていないようだが。」
テツキ「で、それが何で懸案材料になんだ?」
熊坂「そんなことも知らんとはな!とんだ間抜けがいたものだ。」
もはやお馴染みのポーズで現れた熊坂光であった。