精神公演義

□第3話
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泥棒髭「ケータイケータイっと。ありゃ、ポケットに入ってたわ。ゴメンな、あの時連絡取れてたな。」

デリオ「わざと!?」

泥棒髭「だってよ、霧くん後で俺達から請求すんだもんよ。ねちっこく覚えてるしな!」

テツキ「小賢しい事ばっか考えやがって!このアツシはバカで暑苦しくて、しかも手癖が悪い人間の屑だ。」

金髪男「おいおい嬢ちゃん、ウチの霧崎総長に馴れ馴れしくすんじゃねーよ!?ヤキ入れんぞ?!」

テツキ「どうしてテメーはそう女子供には強気なんだ!?別に気にしてねーよ!」

金髪男「けっ、総長は寛大だから許して下さるとよ。感謝しろよ?」

テツキ「我慢せずぶち殺していいからね?!コイツはコウジ。ザコのくせして態度はデカい、そして当然バカというゲス野郎だ。」

金髪男改めコウジ「うむ、紹介御苦労。」

テツキ「何様!?」

デリオ「ええと、緑がスギヤ、青がミズナ、赤がアツシ、黄色がコウジね。わたしはデリオ。」

泥棒髭改めアツシ「いや、聞いてないけど。」

テツキ「無礼でゴメン!」





用を足し終えた緑が戻り、6人でちゃぶ台を囲む。

デリオ「ところでテツキ。貴家幸太って人、知ってるよね?」

テツキ「初代八名氏の“利他神君”だろ?そりゃ知ってるよ、小太陽ゆかりの偉人だしな。おれ達芝那っ子は皆あの男を渇仰してる。」

デリオ「じゃあ、その貴家公の家来の貴門精霊は知ってる?」

ひとまずデリオはこの時代での自分の知名度を把握しておくことにした。これからの活動をしやすくするためだ。だが、この問いが墓穴を掘ることになる。

テツキ「貴家公が生んだ6体の精霊だろ。貴家神君が死んでからも、この天遁帝国のどこかにいるという。…ん?」

ちび女改めミズナ「そういやさぁ、精霊にデリオって名前の奴いたよね。」

デリオ「ギクッ!」

本名を隠しもせずそのまま使ってしまったおマヌケ精霊デリオは、心の底から自分を責めた。

アツシ「ああ。同じ名前だな、お前と。」

緑髪男改めスギヤ「確か芝那小太陽に宿ってるんだよな。…デリオ、お前まさに小太陽の前にいたよな。」

デリオ「ギクギクッ!」

デリオは冷や汗を流し始めた。

コウジ「そう言えば、スギヤの演技を見張ってた時思ったんだけど、コイツ何もない場所から突然現れてたぞ?」

デリオ「ギクギクギクッ!」

スギヤを発見し、空中浮遊をやめたときである。まさか目撃者がいたとは…。

テツキ「突然現れた?瞬間移動か…あるいは透明になってたのを解除したとかか?何れにしろ、そんじょそこらの娘に出来る芸当じゃねーな。」

スギヤ「精霊なら精神体だろよ、不可視化を解除したとするなら辻褄が合うぜ!?」

デリオ「ギクギクギクギクッ!」

もう誰とも視線を合わせられない。目を泳がせるしかないおバカ少女…。

ミズナ「しかもさー、小太陽の精霊って女の姿じゃなかったっけか?丁度コイツくらいの。」

デリオは、観念した。

デリオ「スイマセンでした、わたしがその精霊デリオです…。」





テツキ「まさかとは思ったが、マジかよ…。」

コウジ「ひえええー!自分、ナメた口叩いてすんませんでした!」

相手が精霊だとわかり、急に腰が低くなるコウジ…。

デリオ「いやっ、そんな!精霊って言ってもそんな大層なもんじゃないからね!?普通に接してくれていいからね!」

コウジ「けっ、何だそうかよ。ビビって損したぜ。そうならそうとはよ言えや小娘!」

テツキ「態度デカいわ!ッとに見た目弱そうな相手に対しては強気だなテメーは!クズが!」

よく怒鳴る奴らである。

スギヤ「んで、その精霊さんが何で今こんな所に?…あっ、オレという尊い勇者を救うため?」

デリオ「尊い!?…まあ、倒れてたキミを見つけたのは偶然で、ホントは別に用があったから出て来たんだけど…。」

アツシ「して、用とは?」

デリオ「…。ゴメン、それはちょっと…秘密ってことで。」

精神公については秘匿することに。

スギヤ「何だ秘密て。気になるな。」

デリオ「いや、気にしないで。ね?」

ミズナ「そう言われると余計気になるな〜。」

意地悪いな。

テツキ「そっとしといてあげなさい!まぁ言いたくなきゃ別にいーんだ。」

声の調子を整えるため、テツキはお茶を口に含む。

テツキ「デリオ、おれ達デリはな、芝政制覇、ひいては全国制覇を目指している…!デリを帝国一の師団にのしあげてーんだ。そこで、だ。」

デリオ「?」

テツキ「そのための戦力を今求めてる。デリオ…お前、ウチに入らねェか?」

デリオ「!?」

テツキ「精霊てのはよくわかんねーが…お前も能力者なんだろ?勢力の増強を図りたい。無理にとは言わんが…どうだ?」

デリオ(この師団、四天王はともかくとして、総長のテツキは信頼できそう。それに腕もそこそこ立つようだし。何より、能力者なんてそうそう出会えるものでもないだろうし…この機会を逃す手はない。よし、彼らにしよう。)

何やら考えを固めたデリオは、意を決してテツキに答えを出した。

デリオ「ねえテツキ。ちょっとお願いがあるんだけど。」

テツキ「何だ?金なら貸さねーぞ。」

デリオ「わたしは精霊だから、あんまし表立って世の中に干渉したくないの。だから師団に加入するのはちょっと遠慮するよ…。」

デリオの返答に少しがっかりした顔を見せるテツキ。しかし尚もデリオは続ける。
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