精神公演義
□第9話
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5歳くらいの子「ギャー!網戸破けてるー!?」
4歳くらいの子「スゲェー!」
デリオ「しくしくしくしく…」
子供たちは皆貴家邸に上り込む。窓から人が飛んでいったことには、さぞびっくりしたことであろう。
ホジロー「申し訳あいもはん!あん場じゃ仕方なかったんでごわす…。」
無論ホジローに故意は無かった。しかし貴家邸をその眼前でものの見事に傷物にされたデリオの落ち込み様は、まるでお通夜のようであった。スギヤは少しでもデリオを慰めようと、何を思ったか熊坂の残したズボンを拾って窓にあてがう。
スギヤ「元気出せよデリオ。ほらっ、これで元通りだろう?」
テツキ「何て気色の悪い暖簾だ!?風よけにならねェし!」
コウジ「それはそうと、ホジロー。お前凄い力持ちだよな。人間をあんな摘まみ方してあんだけ投げ飛ばせるなんてよ。」
ホジローは壊した窓に近寄りながら答えた。
ホジロー「力も力で自信はあいもす。おいどんはトラックの運転手をしておいもんでね。力仕事はお手の物でごわす。ただし、さっき見せたのは能力なのでごわすが。」
そう言ってホジローは近くにあったタンスの角を片手の指3本で握り、そのままぐぐっと持ち上げた。
コウジ「おお…!」
スギヤ「すげェな…。」
ホジロー「おいどんの能力は“持つ”ことでごわす。この様に変な場所を変な持ち方したとしても、両腕でがっしり支えたのと同じように持ち上げる事が出来るんでごわすよ。」
タンスをもとに戻す。ずっしりとした重量感があり、見た目相応の重さはあったようだ。
テツキ「見ると凄いが説明聞くと地味に聞こえるな…。でも力仕事にはうってつけだな。意外に潰しが効く能力かもしれん。」
デリオ「ホジロー!このタンス!前あったのと違う!買い換えたでしょ!?」
コウジ「女々しいな!家具が変わってるぐらい仕方ないだろうが!」
貴家邸の内部の現状を見たデリオは、懐かしさよりも寧ろ落胆を感じた様子だ。内装の変化に苛立つデリオに、ホジローは申し訳なさを感じながらもただ苦笑いするしかない。
デリオ「テツキ、もう帰ろうよ…。なんか疲れちゃった。」
テツキ「そうだね…。だがその前にやることがあるだろう?」
デリオ「?」
テツキは改まってホジローの方を向く。
テツキ「ホジロー。おれは土産の奉公人であると同時に能力者を集めた師団の総長でもある。今熊坂の野郎が芝那制覇を狙ってるってことは話したよな。おれ達“デリ”はそれを阻止したい。」
ホジロー「おいどんヤスジローなんでごわすが…。」
テツキ「そのための戦力を今集めてる。芝那を回って能力者を探しているんだ。そして今日お前と出会った。ホジロー、おれの師団・デリに入ってくれねェか!?」
ホジロー「!」
スギヤ「皆で協力して熊坂を倒そうぜって話。」
コウジ「味方は多い方が心強いだろ?」
ホジロー「そういうことでごわすか。…まァいいでごわしょう!」
テツキ「おっ!」
良い感触が得られたようだ。テツキの表情が明るくなる。
ホジロー「仕事もあるんで常に力になれるわけではありもはんが…テツキ総長に従いもそ!」