文(OO:刹那受)

□3月3日
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「…桃の節句?」
「そう、桃の節句こと『雛祭り』女の子の女の子による女の子の為の日本のお祭りよ?」
スメラギからの通信によって呼び出されたプトレマイオス、ブリーフィングルーム。そこに用意されている色鮮やかな十二単に訝しげに眉を寄せた刹那は、力説をするスメラギに視線を移す。
「今日が『雛祭り』と言うのはわかった。…で、俺とその『雛祭り』に何の関係があるんだ?」
「アナタに雛人形になって頂きたいのです」
「王留美?」
シュウン…ッとドアが開くと、そこにはメイクボックスを手にした紅龍を従えた王留美が立っている。
「雛人形は雛祭りの必須アイテム。アナタには是非、お雛様をお願いしますわ、刹那・F・セイエイ。紅龍」
「…畏まりました、お嬢様。失礼します」
「……な…ッ…」
(王留美の合図と同時に刹那は紅龍によって身体を背後から羽交い締めにされ、遅れてやってきたクリスティナ、フェルトを確認すると王留美はニコリと笑顔を浮かべ)
「…では、始めましょうか」
「お…俺に触るなーーッ!!」
魂の叫びも虚しく、刹那は雛祭りの犠牲になるのだった…。
「…………」
一時間後。抵抗の疲労感にグッタリとした刹那は不機嫌極まりない様子で黙り込んでいた。
「…まったく、そんな顔してると折角のお雛様が台無しよ?だけど此処までしてメイクさせて貰えないのは残念ね…」
刹那の様子を見たスメラギが苦笑混じりに呟くも、王留美には大した問題では無かったのかニッコリと頼りになる…しかし刹那にとっては悪魔のような笑顔で。
「御心配なく、ちゃんと彼にメイクを施せる人物を呼んでおきましたわ。そろそろ到着する筈なんですけど…いらっしゃったようですね」

「王留美、緊急召集らしいけど一体何が…って、刹那?」
「お待ちしておりましたわ、ロックオン・ストラトス」
「…ロックオン?」
ドアが開くと共に現れたのはハロを抱えたロックオン。聞き慣れた心地良い声に顔を上げた刹那に、ロックオンも視線を向ける。
「何やってんだ?お前…それにその格好…」
「キレイ、キレイ」
「お雛様ですわ、可愛らしいでしょう?」
「あんたの仕業か…。確かに可愛らしいが…」
王留美の笑顔と言葉に事態に察しをつけると、その犠牲になったらしい刹那に気の毒そうな視線を向けた。
「つまり俺に刹那のメイクをして欲しいと?」
「ええ。刹那って他人に触れられるのを嫌ってるから、メイクさせて貰えなくて」
スメラギが刹那に視線を向ければ、それまで此方を気にしていた刹那はフイッと顔を背ける。その仕草にロックオンは「…だろうな」と苦笑を禁じ得ず。
「ちなみにコレがお雛様の写真ですわ、お願い出来まして?」
手渡された写真に写された綺麗な色艶のある人形の姿を確認すれば、興味を示して刹那と写真を交互に確認し。
「…なる程ねぇ。おい…刹那」
「…やらないぞ」
「そう言うなって、女の子の為の大切な年中行事らしいし、ココは折れてやったらどうだ?」
ロックオンの言いたいことを察したのか即答してくる刹那に笑いをこぼすと、フテ腐れている少年の元へ歩み寄り。
「……」
「ま、ぶっちゃけ俺も見てみたいってのもあるんだが…これもいい思い出になるさ。…だろ?」
ポンと刹那の頭に手を乗せるとグッと互いの顔を近付けてニッと笑い。
「1人が嫌なら俺もこの隣にいる人形の格好をしてやるよ。な?」
ロックオンの人懐っこい笑みに盛大に溜め息を吐くと、渋々といった様子で頷き。
「…わかった、すればいいんだな」
「おりこうさん。そんじゃまぁ…始めますか」
「子供扱いするな」
「セツナ、コドモ。セツナ、コドモ」
「……〜ッ…」
「はいはい。それじゃ…メイクが終わるまで全員外に出てくれるか?」
尚も不機嫌そうな刹那に対しクックッと肩を揺らしながら楽しげに笑うと、立ち上がりメイクボックスを手にして再び刹那の傍に戻り。
「あら。私達の事なら気になさらず、そのまま始めて頂いて構わなくてよ?」
王留美の言葉に振り返ったロックオンは刹那の頭に手を置くと、自らの腰に手を当てながら含んだ笑みを浮かべる。
「俺はともかく、コイツが気にする。…って事で後のお楽しみだ。それに…俺としても無防備な刹那を人目に晒したくないんでね?」
「分かりましたわ、それではお願いします。」
クスリと笑みを漏らしドアに向かって歩き出した王留美は、スメラギ達にも目配せをして。
「そうそう、アレルヤやティエリアも立ち入り禁止で宜しく頼むぜ?とびきりの美人に仕上げてやるからさ」
「ええ、期待してますわロックオン・ストラトス。それでは後程」
王留美はニコッと綺麗な笑みを称えると、部屋を出て行った。


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