文(OO:刹那受)
□体温
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『ロックオン フショウ、ロックオン フショウ』
聞こえてきたハロの音声に血の気が引くのを感じた。
洗脳されていたとは言え、自らの肉親を手に掛けた時にすら感じなかった感覚。
集中治療室に入ってるロックオンの姿に胸の辺りが苦しくなり、失いたくないと強く願う。
代われるものなら…。
………なのに。
ピンピンしていた。
モニター越しに聞こえてきた何時ものロックオンの声。
安堵すると同時に、ロックオンに対して苛立ちを覚える。
「デュナメスを見てくる」
俺はその場を後にした。
「刹那」
「………」
知るか。
「せ〜つな?刹那くん?」
「……」
心配させやがって。
「…お〜い…」
「……」
だんまりを決め込む俺の後をロックオンがついてくるが、構わず。
「…痛…ッ!…イタタタ…ッ…眼が…ッ…」
「…ッ!…ロックオン!?大丈夫かっ?」
突然。
負傷した右目を押さえながらロックオンがしゃがみ込んだ。
慌ててロックオンの元に駆け寄って床に膝をつき、眼帯をつけているその顔を上向かせると同時に接近してきた視界がボヤけた。
互いの唇が触れる。
「…な…ッ…」
「…やっと止まってくれたか。何をそんなに怒ってんだ?…もしかして無事じゃない方が良かった…とか?」
逃さないように掴まれた両腕から、ロックオンの体温が伝わってくる。
ちゃんと…生きている。
「そんな訳ないだろ…ッ…!本気で言ってるなら殴るぞ!」
「…悪い…冗談だ」
「…質が悪すぎる」
「悪かった、心配してくれてたんだよな…?」
腕を引かれると、そのままロックオンの腕に抱き締められた。
ロックオンの体温に包まれ、漸く身体の緊張が解かれていく。
「……生きてる…」
「…ああ…」
「頼むから…あんなムチャクは二度としないでくれ…」
「…お前が言うかぁ?このきかん坊が…」
「……」
子供をあやす様に後頭部を撫でる大きな手が心地良く、広い背中に腕を回し眼を閉じた瞬間。
無遠慮に呼び出しの電子音が廊下に響いた。
「残念…呼び出しだ」
「ああ」
身体を離す事に名残惜しさを感じ、黒い眼帯の上からそっとキスをする。
驚くロックオンの表情を見ると、気分が良い。
「…刹那?」
「おまじないだ。少しでも早く治るように…」
短く答えて立ち上がると、ロックオンに背中を向けて歩き出す。
赤らんだ顔を見られないように。
end
あとがき:#22 トランザムを見て書いてみました(^-^)。ブリーフィングルームに集まる直前の妄想話です!